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骨芽細胞とは?わかりやすく解説!破骨細胞との違いや働き、活性化させるホルモン、骨再生医療での役割について

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院長 黒木 良和

九州大学医学部卒
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授

骨の形成にかかる細胞は多くありますが、その中でも骨芽細胞は重要な役割を持つ細胞です。そのため、骨芽細胞の機能が低下してしまうと、骨粗鬆症や歯周病などを引き起こしやすくなります。

本記事では、骨芽細胞の働きや破骨細胞との違い、活性化するホルモン、骨再生医療などについて詳しく解説します。
骨の健康に関心のある方はぜひ参考にしてください。

骨芽細胞とは何か?

骨芽細胞

骨芽細胞とは、骨の生成に関与する細胞の一種であり、塩基性のアルカリフォスファターゼを多量に含むことが特徴です。

骨組織中に存在しており、骨形成において重要な役割を果たしています。

間葉系幹細胞から分化することによって骨芽細胞となります。間葉系幹細胞は、骨芽細胞だけでなく、軟骨細胞、脂肪細胞、筋肉細胞など、さまざまな細胞へと分化できます。

骨芽細胞の働き

主な機能は、骨の生成です。骨芽細胞はコラーゲンを産生し骨の表面に分泌させます。そこに骨の主成分であるリン酸カルシウムが沈着することで骨が形成されます。

また、骨芽細胞は、血管新生を促進する成長因子である血管内皮増殖因子(VEGF)の分泌も行います。これによって、骨芽細胞が形成する新しい骨は、血液供給が確保され、より効果的に作られます。

骨の生成以外にも、いくつかの機能があります。例えば、骨芽細胞はIL-7(インターロイキン7)を産生し、体を守るための機能を有しています。IL-7は、免疫機能として重要なB細胞とT細胞の発生に深く関わるタンパク質です。

骨芽細胞と破骨細胞との違い

骨芽細胞

破骨細胞は、骨の破壊を担当する細胞であり、骨芽細胞と破骨細胞は、骨代謝の調節において相反する役割を果たしています。骨芽細胞が新しい骨を生成する一方で、破骨細胞は骨を分解することで、古い骨の除去を促します。このように、骨芽細胞と破骨細胞の働きのバランスを保ちながら骨代謝が行われています。

破骨細胞と比較すると、骨芽細胞はより多彩な機能を持っています。例えば、骨基質の生成や骨形成を促すサイトカインの分泌、血管新生の促進などです。

骨芽細胞の異常による影響

骨芽細胞の異常によって、骨粗鬆症や歯周病などの疾患が現れます。

骨粗鬆症

骨芽細胞

骨粗鬆症は、骨量(骨密度)が減少し、骨組織が弱くなっていく疾患です。この病気は、年齢や女性ホルモンの減少、栄養不良などが原因とされていますが、骨芽細胞の機能低下も重要な要因の一つと考えられています。

骨粗鬆症では、骨芽細胞の分化や機能が低下します。上記も触れましたが、骨芽細胞は骨の再生に必要な細胞であり、骨量を維持するために重要な役割を担っています。しかし、骨粗鬆症においては、骨芽細胞が正常に機能しなくなり、骨の再生が妨げられます。その結果、骨の量が減少し、骨組織が弱くなります。

また、骨粗鬆症には、破骨細胞による骨の破壊も関係しています。骨粗鬆症では、破骨細胞が活性化され、骨の破壊が進みます。骨芽細胞と破骨細胞の働きのバランスが崩れ、骨芽細胞の働き以上に破骨細胞が働いてしまうことで骨量の減少を引き起こします。

骨粗鬆症は骨量が減少して骨組織が脆弱になる疾患であるため、様々な不利益やデメリットが存在します。例えば、転倒や衝撃を受けた際に骨折しやすくなるため、日常生活での怪我による骨折が起こりやすくなります。

さらに、骨粗鬆症は身体的な症状だけでなく、心理的な影響も与えることがあります。例えば、骨折を恐れて身体を動かさなくなるため、身体機能の低下や社交的な活動の制限、過度な精神的ストレスを引き起します。

歯周病

骨芽細胞

骨芽細胞は、歯周病と密接に関係しています。歯周病は、歯肉の炎症から始まり、徐々に歯を支える骨の破壊を引き起こす疾患です。この破壊は、破骨細胞によって引き起こされますが、骨芽細胞もまた、歯周病に影響を与えます。

歯周病において、炎症が引き起こされると、骨芽細胞の分化や機能に影響が出ます。歯周病による炎症性サイトカインの産生は、骨形成シグナルに影響を与え、骨芽細胞の分化や機能を妨げます。その結果、骨の新陳代謝が悪くなり、骨量が減少します。そして歯を支える骨(下顎骨)の骨量が少なくなることによって、より歯周病の進行が進みやすくなります。

骨芽細胞の検査方法

骨密度測定や血液検査によって、骨芽細胞の量や状態を評価できます。これらの検査結果をもとに、骨粗鬆症のリスクの評価や、予防法や治療法の選択が行われます。

骨密度測定

骨芽細胞

骨密度測定は、骨の強度や密度を測定するための検査であり、骨量を確認することで、骨芽細胞の状態の参考になります。この検査には、デュアルエネルギーX線吸収法(DXA法)や、超音波法、MD法などがあります。どの検査法も痛みの心配がなく、測定も短時間で終了します。特にDXA法は、他の検査法より精度が高いといわれ、骨粗鬆症の診断や治療法の選択に利用されます。

血液検査

骨芽細胞

血液検査によって、骨芽細胞に関連するタンパク質や酵素の量を測定できます。例えば、骨芽細胞由来のアルカリフォスファターゼやオステオカルシンなどがあり、これらの値が増加すると、骨形成能力が高まっていることが示唆されます。一方で、血中のカルシウムやビタミンDの量も、骨形成や骨代謝に関連しており、これらの値が低下している場合は、骨量の減少や骨粗鬆症のリスクが高まっていることが考えられます。

骨芽細胞を活性化させるホルモン

骨芽細胞は、ホルモンによって影響を受けることが知られています。特に女性ホルモンやカルシトニン、パラトルモンは、骨芽細胞の機能に大きな影響を与えます。

エストロゲン

骨芽細胞

女性ホルモンは、エストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンで構成されます。そのうちエストロゲンは、骨芽細胞の成長を促進し、骨の形成を助けます。女性は閉経後に急激に骨密度が減少する傾向にあり、これは閉経によってエストロゲン分泌が減少することが原因です。

そのため女性の閉経による骨粗鬆症の治療に、エストロゲンが使用されることがあります。

カルシトニン

カルシトニンは、甲状腺から分泌されるホルモンの一種であり、主に血中カルシウム濃度の調節に関与しています。カルシトニンは、骨芽細胞の分化を促進し、骨芽細胞による骨形成を助けることが報告されています。そのため、カルシトニンは骨粗鬆症の治療薬としても利用されます。

パラトルモン

パラトルモンは、副甲状腺から分泌されるホルモンで、血中カルシウム濃度を高める働きがあります。骨に対しては、パラトルモンが増加することで骨芽細胞が活性化され、骨形成を促します。一方で破骨細胞による骨を分解も促進するという2面性があります。

パラトルモン製剤を持続投与した場合、骨を分解が優位に進み、間欠投与(休薬期間を設ける投与方法)した場合、骨の形成が優位に進むことが分かっています。そのため骨粗鬆症治療薬としてパラトルモン製剤が使用される際は間欠投与されます。

骨密度低下の予防や治療

適度な運動や食事改善によって骨芽細胞の活性化や骨密度増加を促すことができます。骨粗鬆症や歯周病の予防や治療につながるため、ぜひ実践してみましょう。

適度な運動

骨芽細胞

運動が骨の健康に大きな影響を与えます。骨芽細胞が活性化され、骨形成が促進されるため、骨密度が向上することが期待されるためです。

特に骨にかかる負荷が大きい動作を繰り返し行うことで、より骨密度が向上することが分かっています。たとえば、バレーボールや重量挙げなどの高負荷の運動が効果的です。

高負荷の運動以外は効果がないということではなく、散歩や水泳のような低負荷の運動でも継続的に行うことでも効果が期待できます。

運動を継続することが重要であり、既に定期的に運動している人はそのまま続けましょう。また、運動が苦手な人は、散歩や自転車に乗ることから始めることをおすすめします。

食事改善

骨芽細胞

食事によっても骨芽細胞の活性化が促進されます。骨の健康に必要な栄養素としてカルシウムビタミンDが代表的です。骨の主成分はリン酸カルシウムであり、カルシウムは骨を形成する元となります。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助ける効果があります。そのため、カルシウムとビタミンDを同時に摂ることで、より効果的に骨密度を高められます。

また、ビタミンKも骨密度増加に貢献します。ビタミンkは、骨に存在するオステオカルシンを活性化し、カルシウムの骨への結合を促します。

日光を浴びる

骨芽細胞

ビタミンDは日光を浴びることで生成されます。ビタミンDには、骨の成分であるカルシウムの吸収を促進します。ただし過剰な日光浴は、紫外線の曝露による皮膚がんのリスクを高めるため、適度な時間やUVカット等の対策が必要です。例えば、帽子やサングラスを着用する、日焼け止めを塗る、長袖や長ズボンを着用するなどの方法があります。

骨再生医療での役割

骨芽細胞

骨再生医療において骨芽細胞が重要な役割を果たすとされており、研究が進められています。

再生医療とは、人工的に作られた細胞や組織を用いて、損傷した組織や器官を修復・再生する治療法です。修復・再生させたい組織になりうる細胞の移植が主な手法です。

それに準ずると、骨再生医療においては、骨の形成を担う骨芽細胞の移植が望ましいと言えます。しかし骨芽細胞の量や質を確保するためには、患者からの骨髄細胞採取が必要であり、これには手術的な負担やリスクが伴います。そのため、骨芽細胞へ分化する幹細胞や骨髄そのものを移植する方法も研究されています。

骨芽細胞についてまとめ

本記事では、骨芽細胞について解説しました。

骨芽細胞は、骨の成長や修復に不可欠な細胞です。骨芽細胞は骨を形成し、修復することで、私たちの骨は常に新しい細胞で構成され、健康な状態を保ちます。

骨芽細胞の正常な機能を維持するために、バランスの取れた食事や適度な運動などを心がけましょう。

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