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インキュベーターとは?細胞を培養する?医療で活躍するこの機械の役割やできることをわかりやすく解説!

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院長 黒木 良和

九州大学医学部卒
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授

難病治療やウイルスによる感染症や病気の治療薬、あるいはワクチン開発にも大きな役割を担っている「インキュベーター」。

今回は、私たちの健康の土台を担ってくれる

インキュベーターについて解説していきます。

細胞を培養することや、細胞を培養するために必要な環境など、詳しく説明していきますので、インキュベーターの効果や機能を確認していきましょう。

インキュベーターとは?

インキュベーターとは

インキュベーターとは、細胞を培養するための装置になり、細胞を実験するサポートとして使われます。

機械の中で細胞を体内の自然な状態に近い環境にして、培養するために使われます。

なお、一般的にインキュベーターは細胞培養以外にも用いられる「恒温装置」を指すため、細胞培養の装置は「CO2インキュベーター」と区別して呼ばれることがあります。

細胞の培養の有用性

インキュベーターとは

19世紀頃から動物や植物、バクテリアや箘など、多種多様な生物の細胞の培養法が確立してました。

細胞の培養では培養中の細胞にさまざまな処置を加えることができます。

そのため、生物を個体レベルで細かく観察することが可能になります。

現在、細胞の培養はさまざまな疾患や新薬の研究にも非常に有用とされています。

また、細胞の培養は、一部の動物細胞でウイルス研究にも使われています。

細胞を培養するとは?

インキュベーターとは

細胞を培養する意味を一言で説明すると、細胞を生物から取り出して、生かし続けることです。

細胞を培養する際に、ヒトが普段過ごしている一般的な気温や湿度下では、細胞は死滅してしまいます。

そのため、細胞を培養するには、その細胞を取り出す前の培養に適した環境に近づけることが必要不可欠になります。

すなわち、温度や湿度、二酸化炭素を一定に保つ環境作りが求められます。

細胞培養に重要な「培地」を整える

インキュベーターとは

通常の細胞培養では、円形のシャーレなどの培養容器に細胞を入れた「培地」によって、細胞が生きられる環境を整えます。

培地は、培地は細胞の成長に必要な栄養素や成長因子、ホルモンを供給しており、培養液のpHおよび浸透圧を制御するために培養環境の中で最も重要な要素になります。

主な、培地の分類は下記の3種類になります。

  • 基本培地
  • 血清低減培地
  • 無血清培地

培地は目的に応じて適したものを選ぶことが必要になり、それぞれ添加する血清の必要量も異なります。

血清

基本培地での細胞の培養において、成長因子や接着因子、ホルモンなどの供給源として必要な重要因子になります。

また、血清は細胞膜の透過性を制御して、脂質や微量元素などを細胞へ取り込む働きを持ちます。

基本培地

大部分の細胞系は、基本培地中で良好に成長します。

また、アミノ酸やビタミン、グルコースなどが含まれています。

基本培地成分には、血清をさらに添加することが必要になります。

血清低減培地

細胞培養実験において、血清の望ましくない効果を低減させる一つの方法です。

栄養素や動物由来の因子を添加した基本培地で、必要な血清の量が低減できます。

無血清培地

血清を適切な栄養成分やホルモン成分で置き換えることにより、動物血清使用問題を回避することができます。

無血清培地を使用する最も大きなメリットは、特定の細胞型に選択的な培地の調製ができる点です。

細胞を培養するときに必要な環境とは?

インキュベーターとは

この項では、細胞培養の必要な環境について詳しくご説明します。

もし、細胞培養の環境設備が不十分な場合は、細胞の機能に影響を及ぼすだけでなく、死滅してしまう可能性もあります。

そのため、細胞培養には温度や湿度、pHの制御を適切にする必要があります。

細胞を培養する適温やpHの調整など良好な環境を確認していきましょう。

温度や湿度、二酸化炭素の適温とは?

ヒトなどの哺乳類の細胞を培養するときは、温度は約37℃、中に水受け皿を入れて湿度は95%前後に保つことが必要です。

なお、細胞の培養で昆虫細胞の適温は生育の最適化のために27°C、鳥類の細胞系は最大成長のために38.5°Cが適温と言われています。

また、二酸化炭素濃度は培地によって推奨値が異なりますが、主に4〜10%が多く、大気中よりも酸素濃度を下げる必要があります。

さらに、湿度が低下してしまうと培地からの水の蒸発を促進し、培地成分の濃度上昇や浸透圧の変化を引き起こしてしまうため、湿度調整も重要です。

インキュベーターは、温度や二酸化炭素、湿度などさまざまなパラメータを各種センサーでモニターし、設定した値に保たれるようにフィードバックをかけます。

pHを7.4付近に調整

通常の大気中のCO2濃度は、0.05%以下のため、培地中に含まれる炭酸イオンの平衡状態が崩れます。

CO2濃度を制御することで、細胞の代謝による培地の酸化を防いで、培地のpHを最適な状態に保ちます。

そのため、インキュベータでは庫内のCO2濃度を体内のCO2分圧に近い5%程度に調整して、培地中の炭酸イオンと庫内CO2ガスとの平衡を維持します。

培地の炭酸イオンが一定濃度に保たれて、培地のpHを生理的条件に近い7.4近傍に調整することができます。

主なインキュベーターの温度制御方式

インキュベーターとは

インキュベーターの主な温度制御方式には、大きく分けて次の2種類あります。

  • ウォータージャケット方式
  • エアージャケット方式

ウォータージャケット方式とエアージャケット方式の比較

下記の表に、それぞれの特徴とメリット、デメリットについてまとめます。

ウォータージャケット方式 エアージャケット方式
特徴 ・インキュベーターのチャンバー庫内外壁と内壁の間に水を注入でき、庫内を水で覆うようなシステム

・周りの水を温めたり冷やすことで庫内の温度を調整する

・歴史ある制御方法で現在も多くのところで使用される

・インキュベーターのチャンバー内壁面にヒーターを内蔵し、直接熱を発生させ庫内の空気を温める方式

・高温の空気を循環させることで庫内を高熱滅菌することも可能

メリット ・保温効率が高い

・温度の安定性や温度ムラが少ない

・細かい調整がしやすい

不測のアクシデント時にも庫内の環境を保つことが出来る

温度調整が素早く変更可能

・構造がシンプル

・価格が比較的安価

・水を使わないので軽量

デメリット ・水の温度変化には時間がかかる

・設定温度を変更がすぐに反映されない

・構造が複雑

・管理や移動するのが大変

・周囲環境変化で温度が影響されやすい

・不測のアクシデントで、短時間で温度低下が発生する

インキュベーターのCO₂制御方式   

インキュベーターの主なCO₂制御方式には、次の2種類があります。

  • T/Cセンサー(サーミスタ式)
  • IRセンサー(赤外線式)

T/CセンサーとIRセンサーの比較

下記の表に、それぞれの特徴とメリット、デメリットについてまとめます。

T/Cセンサー(サーミスタ式) IRセンサー

(赤外線式)

特徴 ・CO₂を含む大気中の電気素子の電気抵抗値の変化により測定する方式

・温度および湿度の設定を比較的一定の条件にて、CO₂制御をされる場合に使われる

・CO₂を含む大気中の赤外線の吸光度によって測定する方法

・温度および湿度の設定を頻繁に変更される場合に使われる

メリット 構造が単純で安価

・古くから採用されている実績がある

温度・湿度の変化に依存しないため正確
デメリット 構造が複雑で比較的高価

インキュベーターはどんな役に立つのか?

インキュベーターとは

インキュベーターはあらゆる場所で、研究や開発などで活用されています。

この項では、インキュベーターの活躍している具体例をご紹介します。

現在の主なインキュベーターの使用用途

インキュベーターとは

下記は、現在主に使われているインキュベーターの使用用途について一覧表です。

機関など 具体例
大学 医学部/薬学部/農学部/工学部/理学部/歯学部

など

・iPS細胞を用いた再生医療の研究

がん研究

創薬研究

遺伝子治療の研究

・タンパク質の機能解析

・ウイルス研究

・抗体の生産

など

公的機関 研究所/試験場/保健所/公衆衛生研究所/畜産試験場

など

・動物などの品種改良

・病原体の検出方法などの開発

など

企業や医療機関 創薬/研究開発部/生産部/臨床検査

など

・各種細胞の培養

・細胞製剤の研究

抗体やワクチンの大量生産

・創薬研究

など

インキュベーターで注意することと対策

インキュベーターとは

インキュベーター使用の目的は、温度変動など環境要因を最小限に抑えることです。

理想の状態で細胞を培養するためには、精通した培養技術と環境を整えなければなりません。

主に下記のことに気をつけて行う必要があります。

  • 温度変動
  • 蒸発
  • 振動

それぞれの原因と対策を確認していきましょう。

温度変動

原因

  • 実験中にインキュベーターを何度も開け閉めすることで発生
  • 庫内の容器の重ね方や置き場所
  • ディッシュを積み重ねるときの位置の影響

対策

  • 必要がない限りインキュベーターは開けないようにする
  • 失敗が許されない重要な培養細胞は庫内の奥のほうに置く
  • 最下段のディッシュは金属の棚板に一番近くなるため、早く温まる

蒸発

細胞増殖速度やパターンに影響を及ぼします。

以下の対策で、蒸発を最小限に抑えられます。

対策

  • 貯水タンクは常に満水に保つ
  • ガス洗浄瓶で吸気したガスに加湿する

振動

細胞が同心円状にリングをつくるなど、異常細胞増殖の原因となります。

原因

  • ファンのモーターが緩んでいる
  • 室内の人の行き来
  • モーター搭載機器

対策

  • 頑丈で安定した場所に設置する
  • インキュベーターを水平に設置するや・周囲に毒性の不純物を置かない

以上、環境面での予防策を講じることが、適切な細胞増殖に不可欠になります。

まとめ

インキュベーターとは

今回は「インキュベーターとは?細胞を培養する?医療で活躍するこの機械の役割やできることをわかりやすく解説!」について説明しました。

まとめますと、

  • インキュベーターとは、細胞を培養するための装置
  • 細胞を培養するには、培養に適した環境に近づけることが重要で
  • インキュベーターは、事故や病気の回復につながる医療の進歩に活躍を担う働きがある

です。

インキュベーターとともに、医療がますます進化して、だれもが明るい健康的な体を作り上げる未来を想像していきましょう。

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