コラム

  • HOME
  • コラム
  • 脊髄損傷が治る可能性は?症状や原因、予防方法、再生医療やiPS細胞を用いた治療方法とは?

脊髄損傷が治る可能性は?症状や原因、予防方法、再生医療やiPS細胞を用いた治療方法とは?

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

院長 黒木 良和

九州大学医学部卒
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授

今までの医療の常識であった『治らない病気』とされていた「脊髄損傷」。

これからは『脊髄損傷は治る病気!』と言える日が近づいています。

今回は、脊髄損傷の治療に革命を起こす「再生医療」について、今までの治療法と比べながら詳しくお伝えします。

また、脊髄損傷の原因や症状も整理しながら予防法までご紹介します。

ぜひ、こちらの記事を最後までお読みいただき、脊髄腫瘍の新しい治療の可能性について知識を深めていきましょう。

脊髄損傷について

脊髄損傷 治る

事故や思わぬ転倒などで損傷してしまい、障害が残ることを「脊髄損傷」と言います。

脊髄損傷の患者は日本に15万人ほどで、毎年4,000〜5,000人が受傷していると言われている病気です。

人間の身体は脊椎と呼ばれる背骨で支えられており、脊椎の中には感覚や運動機能などを司る脊髄という神経が通っています。

また、脊椎には脳と体の各部位を連結させる通信経路になる重要な役割があります。

脊髄が司る機能はレベルで分かれており、どのレベルが損傷を受けたかによっても後遺症が変わってきます。

発生頻度が高い年齢は?

脊髄損傷はあらゆる年齢に発生しますが、近年の調査では交通事故による受傷の割合が減少しています。

一方、起立歩行時の転倒による受傷の割合が増加しています。

また、高齢化に伴い61歳以上の割合が増加しており、70代に最も多く発生することがわかっています。

原因としては、加齢に伴う転倒リスクが上がることが挙げられます。

脊髄損傷の重症度の特徴

脊髄損傷の特徴は、高い位置で損傷すればするほど、重症度が高くなることです。

また、一般的に上位頚髄の損傷では呼吸ができなくなり、呼吸器を必要とする重篤な麻痺を生じることがあります。

さらに、胸髄損傷では頚髄損傷と比較して、完全麻痺の可能性が高まります。

犬や猫、ハムスターにも多い

人間だけではなく、犬や猫などの動物にも脊椎骨折による脊髄損傷が多く見られます。

原因は、交通事故や高所からの落下以外に、他の動物とのけんかなどが挙げられます。

また、腫瘍や炎症に起因する病的骨折が起こることもあります。

脊髄損傷が治らないと言われてきた理由

脊髄損傷 治る

脊髄損傷は、手足の麻痺など身体機能に大きな影響を与える可能性が高くなります。

本来、ダメージを受けた細胞は再生させる必要があります。

しかし、今までの脊髄損傷の治療法では一度損傷した脊髄を再生させることも麻痺を回復させることもできませんでした。

また、受傷から期間が経つほどリハビリにも限界が出てくるため、脊髄損傷の根本治療の実現は不可能とされていました。

今までの脊髄損傷の治療法

次に、脊椎損傷の症状を「急性期」と「慢性期」に分けて、代表的な治療法をご説明していきます。

また、後遺症についてもお伝えしていきます。

急性期の治療

急性期は、損傷部位の安静を確保します。

また、手術により脱臼や骨折した脊椎を安定させて、損傷した脊髄をギプスや装具で固定を図ります。

特に、重症化しやすい頚椎の固定は重要です。

頭蓋骨の牽引や手術で神経を圧迫している原因を取り除いていきます。

また、頚髄や上部胸髄損傷では自発呼吸が機能しなくなるため、呼吸確保も実施します。

次に挙げられるのは、脊椎損傷を起こした際に気をつけなければいけない合併症になります。

  • 褥瘡
  • 筋力の低下
  • 関節可動域の低下
  • 呼吸器疾患
  • 尿路感染症

など

慢性期の治療

慢性期は下記のような目的で、運動療法や電気刺激療法を中心にリハビリが行われています。

  • 後遺症の軽減
  • 寝返りの練習で床ずれ防止
  • 下肢静脈血栓などの合併症予防
  • 日常生活をスムーズに送れるため
  • 排泄の練習

また、一人ひとりの状態に合わせた訓練に取り組み社会復帰を目指していきます。

慢性期に入ると受傷時に負った麻痺がそのまま残ってしまうことがあるため、根本的治療につなげることが難しいのが現状です。

残りやすい後遺症

後遺症の有無や度合いについては、損傷した部位によって大きく変わってきます。

損傷の部位が上であればあるほど、症状は重くなる傾向です。

特に上部頸椎では四肢麻痺だけではなく、横隔膜が麻痺することによって呼吸困難に陥ります。

また、中部頸椎の損傷では四肢麻痺が考えられます。

下部頸椎以下では、両下肢麻痺(対麻痺)が残る可能性があります。

さらに、完全な麻痺もあれば、弱い力ながら多少動かせる不完全損傷もあります。

その他、呼吸筋の障害がある場合は肺炎などに、排尿障害の際に尿路感染症などの合併症に注意が必要です。

脊髄損傷の症状

脊髄損傷 治る

脊髄を損傷したときに現れる主な症状は「麻痺」になります。

この項では、麻痺を「完全麻痺」と「不全麻痺」に分けて説明していきます。

完全麻痺

完全麻痺は、脊髄が完全に離断されると発生し、損傷部位に対応する運動機能が完全に失われてしまいます。

手足の感覚がわからない、全く動かせないといった状態になります。

不全麻痺

不全麻痺は運動機能や感覚が完全には失われておらず、運動機能や感覚麻痺の一部だけが残っている状態を言います。

なお、残存する機能は、損傷部位や程度で変わってきます。

脊髄損傷の原因

脊髄損傷 治る

脊髄損傷の主な原因は、外部から重い負荷がかかる衝撃によって起こります。

具体的には、以下のようなケースで起こります。

  • 高所作業中に誤って落下する
  • 交通事故に遭う
  • 転倒で体を激しく打つ

また、外傷性脊髄損傷の主な受傷原因として平地転倒が一番多く、次いで交通事故、低所からの転落が続きます。

高齢者に多い原因である「非骨傷性頚髄損傷」

脊髄損傷 治る

最近では、加齢によって骨がもろくなっている高齢者の脊髄損傷も増加しています。

特に、高齢者に気をつけたいのが平地転倒による比較的軽傷の頚椎損傷が多いことです。

そのため、自宅の中でもちょっとした転倒で脊髄損傷が見られます。

また、頚髄に関しては「非骨傷性頚髄損傷」と呼ばれるタイプの損傷も増加傾向にあります。

加齢によって頸椎の形状が変化することによって保護されているはずの頚髄に負荷がかかってしまい、損傷してしまうケースです。

10代の外傷性脊髄損傷の最多原因

10代の外傷性脊髄損傷では、スポーツ外傷が最も多い原因になります。

また、若い世代の外傷性脊髄損傷の特徴として、高所転落による胸髄・腰髄損傷が多く見られます。

高所転落による胸髄・腰髄損は、完全麻痺を起こしやすくなります。

脊髄損傷の予防方法

脊髄損傷の場合、主な原因は「ケガ」になります。

そのため、高所で作業をする職業の人は安全確認を怠らないことや、スポーツをする人はストレッチなどのケアを徹底することが大切です。

また、高齢者が多い「非骨傷性頚髄損傷」の予防法には、定期的に検診を受けることがおすすめです。

定期検診では頸椎の形状に異常がある場合、早期発見につながり、必要な処置を施すことができます。

再生医療を用いた治療方法とは?

脊髄損傷 治る

この項では、再生医療iPSを用いた最新の治療法についてご説明します。

再生医療は、損傷した神経の再生が期待できる画期的な治療法です。

従来の治療法の問題点を確認しながら、再生医療による脊髄損傷の治療法がどのようなものか見ていきましょう。

従来の脊髄損傷の治療法と問題点

従来の脊髄損傷は、一般的に手術で神経を圧迫している骨片を取り除いた後、リハビリを行うことで回復を目指します。

しかし、手術やリハビリでは、損傷した神経を再生させたり、麻痺を回復させる大きな効果はありませんでした。

また、損傷した部位によっては、寝たきりや車椅子での生活を送らなければいけないケースもあります。

再生医療とは

脊髄損傷 治る

再生医療のメリットは、アレルギー反応などのリスクを避けられる上、脊髄損傷を根本的治療に導きます

現在、脊髄損傷の再生医療で行われる治療法は、最も医療への応用が進んでいる「幹細胞」を投与する方法になります。

幹細胞

幹細胞とは、まだ組織や臓器になっていない細胞のことを指します。

さまざまな組織に変化する特徴があるため、ダメージを受けた組織や臓器の修復や再生に役立ちます。

また、幹細胞は大別すると、次の3つに分けられます。

  • ES細胞
  • iPS細胞
  • 体性幹細胞

それぞれの特徴について、説明していきます。

ES細胞(胚性幹細胞)

卵子と精子が受精後に細胞分裂が起こり、胚盤胞の段階で発生した胚から分離される幹細胞を言います。

ES細胞はすべての細胞、組織へ分化することができる「多能性幹細胞」とされています。

なお、ES細胞は他人へ移植をすると拒絶反応が起きてしまうなどの問題点もあります。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)

脊髄損傷 治る

iPS細胞は、自分の皮膚から細胞を取り出し、そこに遺伝子の操作を加えていく万能細胞です。

移植の拒絶反応がないとされているため、今後の再生医療に非常に注目されています。

体性幹細胞

私たちの生命活動維持のために存在しており、損傷組織の再生に新しい細胞を供給する役割を持っています。

また、存在する各組織で役割を持ち働く幹細胞は「組織幹細胞」とも呼ばれています。

組織幹細胞は、ES細胞やiPS細胞の多能性幹細胞と比較すると、分化する能力が限定的です。

しかし、自分の身体の中にもともとある細胞であるため、治療に応用しやすいメリットがあります。

現在の医療では、「体性幹細胞」が一般的になり、現在発見されているだけでも下記のような種類があります。

  • 間葉系幹細胞
  • 脂肪幹細胞
  • 造血幹細胞
  • 神経幹細胞
  • 血管内皮幹細胞
  • 肝幹細胞
  • 上皮幹細胞

その他、腸管幹細胞や精巣幹細胞などが存在しています。

骨髄由来と脂肪由来の幹細胞治療

脊髄へ使われる幹細胞は「骨髄由来の幹細胞」か「脂肪由来の幹細胞」になります。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

骨髄由来幹細胞

神経に分化しやすいとされていますが、培養しにくい上に感染リスクがあります。

脂肪由来幹細胞

採取や培養がしやすく、感染リスクもほとんどありません。

また、骨髄由来の幹細胞と比べてより多くの細胞を投与できることから、高い治療効果が期待されています。

なお、最近の研究では脂肪由来の幹細胞治療の方が治療成績は高いことがわかっています。

再生医療による脊髄損傷の治療効果

脊髄損傷 治る

脊髄損傷の再生医療では下記のようなさまざまな症状改善効果が期待されています。

  • 運動系…筋力や歩行の改善
  • 感覚系…触覚やしびれの改善
  • 自律神経系…排尿や排便、血圧コントロールの改善

など

まとめ

脊髄損傷 治る

今回は「脊髄損傷が治る可能性は?症状や原因、予防方法、再生医療やiPS細胞を用いた治療方法とは?」について解説しました。

まとめますと、

  • 脊髄損傷は従来手術やリハビリによる治療法が一般的
  • 従来の治療法では後遺症が残る可能性がある
  • 再生医療の脊髄損傷の治療法では根本的改善が期待できる

です。

再生医療は、いままで効果的な治療法が見つからなかった脊髄損傷に対して、大きな可能性が広がる治療として注目されています。

今後も、さらなる成果を期待していきましょう。

おすすめの記事

最近の記事

Scroll Top