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線維芽細胞とは?増やす方法や特徴、働きについて|再生医療での役割についてもわかりやすく簡単に解説!

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院長 黒木 良和

九州大学医学部卒
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授

ストレスや睡眠不足、あるいは気候の変動など、人の身体は様々な原因で肌荒れを引き起こします。そうなったとき、ほとんどの人は薬品や化粧品で解決を図ることでしょう。もちろん、今ある肌荒れを治すぶんには、それらも効果的な手段です。

しかし、その場しのぎの対症療法だけでは、「肌が荒れやすい状態」の根本的な解決には至りません。肌の健康を長期にわたって保つには、皮膚を構成する組織について十分理解し、その働きの助けとなるような生活を心がけることが重要です。

そこで本記事では、皮膚を構成する主要な細胞「線維芽細胞」について、機能や増やし方などを網羅的に紹介していきます。いま現在、少しでも肌の悩みを抱えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

線維芽細胞=真皮組織の構成に必要不可欠な細胞

線維芽細胞

人の皮膚は表皮・真皮・皮下の3層に分かれており、このうち真皮の大部分を構成しているのが線維芽細胞です。正確には、線維芽細胞から分泌されるコラーゲンやエラスチンなどのタンパク質が真皮を形作っています。

皮膚内における役割は色々あるものの、線維芽細胞は基本的に単独では働きません。同じく真皮内に存在する「増殖因子」の働きかけを受けることで、はじめて細胞の分化・増殖が可能となるのです。

線維芽細胞の基本的な働き

線維芽細胞

まずは線維芽細胞の主な役割、「タンパク質の産生」と「創傷治癒」について見ていきましょう。

皮膚の基となるタンパク質を産生する

正常な皮膚環境において、線維芽細胞の主な役目は真皮組織の代謝です。具体的には皮膚の基となるタンパク質を新たに産生し続けることで、肌のハリや弾力を保っています。そのうえ女性ホルモンの分泌にも関わっているため、美肌を保つには十分な量の線維芽細胞が欠かせません。

なお、真皮の代謝間隔は2~6年と幅広く、線維芽細胞がどれだけ活発に働いているかで周期が大きく変わります。周期が短ければその肌は若々しく、逆に周期が長ければ、その肌にはシワやたるみが生じやすくなります。

創傷時に増殖し、患部を修復する

皮膚が傷ついた際には必ず、血球や血小板が傷口を塞いでくれます。しかし、この時点では創傷部がカサブタに覆われるだけで、皮膚自体が元通りになるわけではありません。そこで線維芽細胞の出番です。

皮膚が傷ついた際、線維芽細胞は速やかに患部まで遊走し、増殖因子の指示に従って分裂を開始します。そこから大量のコラーゲン等を産生し、カサブタの下で新たな表皮を形成することで、カサブタが剥離する頃には皮膚が元通りになっているというわけです。

線維芽細胞が生み出すタンパク質の種類

線維芽細胞

線維芽細胞が生み出すタンパク質は、主に「コラーゲン」「エラスチン」「ヒアルロン酸」の3種類です。いずれも化粧品やサプリなどの広告でよく目にする成分ですが、皮膚内における厳密な役割というのは意外と知られていません。

コラーゲン

コラーゲンは、肌のうるおいや弾力を支える繊維構造のタンパク質です。コラーゲンは身体全体のタンパク質の約30%、および真皮組織の70%を占めており、皮膚を形成するうえで間違いなく最重要の物質といえます。

また、コラーゲンは表皮と真皮の境目「基底膜」にも存在し、2種の皮をつなぎ合わせることで皮膚の形を正常に保つ役割を担っています。

コラーゲンが不足すると、真皮のうるおいが失われて乾燥肌になるほか、弾力の喪失によってたるみも生じやすくなります。また、頭皮環境の悪化による薄毛や枝毛など、肌以外のトラブルに悩まされるケースも少なくありません。

エラスチン

エラスチンは、コラーゲン同士の結合を担う繊維構造のタンパク質です。割合としては真皮組織の5%ほどに留まるものの、その中には800個以上のアミノ酸が含まれています。

エラスチンの最たる特徴は、ゴムのような伸縮性を持っていること。肌表面に外力が加わった際、そう簡単に怪我をしないのは、エラスチンによって皮膚が伸び縮みしているからに他なりません。

また、皮膚内のアミノ酸に表皮の水分を保つ役割があることから、エラスチンはコラーゲンと同じくらい肌の保湿力に関わっています。仮にエラスチンが不足すれば、水分と伸縮性を同時に失うことで、肌がすぐヒビ割れてしまうような状態に陥ることでしょう。

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸は、真皮の隙間を埋めるように存在する多糖類です。主に保水力の源である「アセチルグルコサミン」、そして解毒作用を持つ「グルクロン酸」の2物質から構成されています。

ヒアルロン酸は1gあたり6Lもの水分を含有できることから、真皮の保湿において特に大きな役割を果たします。また皮膚の代謝促進にも効果があり、実際にエイジングケアとしてヒアルロン酸注射を取り入れている美容クリニックも少なくありません。

ヒアルロン酸が不足すると、乾燥によって肌が荒れやすくなるうえ、皮膚の代謝機能低下によってシミやそばかすも発生しやすくなります。

線維芽細胞を増やす方法3選

線維芽細胞

線維芽細胞を増やすうえで、難しいことは何もありません。健康的な生活と初歩的なスキンケアを中長期的に続けていれば、着実に肌質の改善を目指せます。また、線維芽細胞を手早く増やしたい場合は、美容クリニックの利用も適宜検討してみるといいでしょう。

生活習慣の改善

まず食生活において、線維芽細胞を増やすために摂取すべき栄養素は以下の通りです。

  • ビタミンA:主に人参、ホウレン草、卵黄、レバーなどに含まれる
  • ビタミンC:野菜や果物の生食によって多く摂取できる
  • コラーゲン:主に貝類、甲殻類、豚足、鶏軟骨などに含まれる
  • イソフラボン:大豆料理全般から摂取できる

これらの栄養素を積極的に摂りつつ、適度な運動と十分な睡眠によって身体の基礎代謝を正常に保っていれば、線維芽細胞は自然に増えていきます。

また、肌の状態は心の健康にも左右されるため、線維芽細胞の安定増加にはストレスを解消する手段の確立・実践が欠かせません。

こまめなスキンケア

真皮内の線維芽細胞をつねに多く保とうと思ったら、生活習慣の改善によって細胞の新生を促進するだけでは足りません。こまめなスキンケアによって今ある線維芽細胞の死滅を抑えてこそ、細胞量の増加を肌質改善という形で実感することにつながります。

まずは乳液やクリームによる保湿、帽子や日傘による紫外線対策など、身近なアイテムでできることから始めていきましょう。もちろん、肌に傷や炎症が生じた際、速やかに適切なケアを行うことは必須です。

美容医療を受けるのも一手

大手の美容クリニックには、線維芽細胞の増加につながる「肌再生医療」が必ずといっていいほど用意されています。中でもメジャーなのは「線維芽細胞療法」。これは受療者自身の身体(主に耳の後ろ)から線維芽細胞を採取し、専用施設で培養・増殖してから治療部位に注入する療法です。

他には、受療者自身の血液を遠心分離機にかけ、PRP(多血小板血漿)を取り出してから治療部位に注入する「PRP療法」も主流です。この療法では、PRPに含まれる数々の成長因子によってコラーゲンの生成が促されます。

いずれも数十万円クラスの高額医療なので、あくまでも予算に無理のない範囲で利用を検討してみてください。

線維芽細胞が減る原因3選

線維芽細胞

線維芽細胞は加齢に従って自然に減少するほか、乾燥や紫外線といった肌のダメージも細胞の死滅につながります。

加齢

加齢によって皮膚の代謝機能が衰えると、新たな線維芽細胞は自然と産生されにくくなります。それと同時に古い線維芽細胞を除去する働きも弱まるため、最終的に老化細胞ばかりが残留し、ひいては肌の老化につながるというわけです。

もちろん、先述の生活習慣やスキンケアを実践していれば、線維芽細胞の減少は緩やかなものになります。また、美容クリニックの肌再生医療についても、年齢制限の類は特にありません。

乾燥

乾燥した空気に肌が長期間さらされていると、失われていく水分にアミノ酸やヒアルロン酸の保湿能力が追いつかなくなります。こうして乾燥肌になってしまうと、皮膚のバリア機能は正常に機能してくれません。

つまりは有害物質が真皮まで侵入しやすくなるため、線維芽細胞を正常な量維持することがとても難しくなります。すでに乾燥肌に悩み始めている人は、ぜひ今からでも保湿ケアに力を入れてみてください。

紫外線

日光から放たれる紫外線には、体内の酸素や水分を「活性酸素」に変える作用があります。また、活性酸素は他の細胞を変性させ、場合によっては破壊させることもある物質です。線維芽細胞を維持するうえで、紫外線はもっとも直接的な脅威の1つといえるでしょう。

幸い今のご時世、紫外線対策につながるアイテムは探せばいくらでも見つかります。まずは日焼け止めやサングラス、UVカット機能のある衣服などを色々試したうえで、ご自身にとって一番続けやすい紫外線対策を検討してみてください。

線維芽細胞に関する美容医療・再生医療には健康保険が適用されない

線維芽細胞

2023年現在、線維芽細胞を用いた皮膚の美容医療には、健康保険が適用されていません。もちろん美容医療というのは、高額の治療費がある種「当たり前」の世界であるため、費用面の不満を表立って口にする人はそう多くないのが実情です。

しかし実際、線維芽細胞は美容医療のみならず、重篤な皮膚疾患に対する再生医療のキーマンとしても研究の対象になっています。線維芽細胞を用いた皮膚の再生医療が一般に提供されるようになったとき、それを万人が受けられるようにするためには、やはり保険診療の対象に追加することが求められるでしょう。

まとめ

線維芽細胞は、3種のタンパク質を産生して肌の潤いや可動性を保ちつつ、創傷時には自ら増殖することによって表皮を修復する細胞です。線維芽細胞は加齢によって自然に減少するものの、生活習慣を改善したうえでスキンケアを欠かさずに行っていれば、十分な細胞量を保つことはそう難しくありません。

本記事を通じて美容に興味を持たれた方は、ぜひ皮膚を構成する他の組織についても調べてみてください。そこにはきっと、あなたの肌を若く保つための秘訣が眠っているはずです。

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