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表皮母斑とは?保険は使えるの?治療方法や症状の特徴、原因、新しい母斑治療法について徹底解説!

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院長 黒木 良和

九州大学医学部卒
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授

あざは私たちにとって身近なものです。特に活発なお子さまほどぶつけたり転んだりする頻度が高いため、親御さまは心配しつつも慣れているものかもしれません。ここでは、ケガなどの外傷的なあざではなく「先天的(生まれつき)なあざ」についてその原因や、治療方法についてご紹介したいと思います。

表皮母斑って病気なの?

表皮母斑

「生まれつきのあざ」を持っている方はかなり多いです。ここでは実際に表皮母斑とはどのようなものなのか、その定義を説明していきます。

表皮母斑とは

表皮母斑とは「生まれつきまたは幼少時にできたあざ」の医学用語です。割合で言うと赤ちゃんの1000人に1人の割合で見られるため、そこまで珍しいものでもなく、普段は服や髪の毛に隠れているため目立たない方がほとんどです。

表皮母斑の特徴

表皮母斑は表皮の過形成によりできる茶褐色のあざです。消えることはなく、私たちの成長に合わせて表皮母斑も大きく広がります。ほとんどのものは痛みやかゆみなどもありません。しかし、そのできた場所や硬く連続したイボのような形状を気にされる方は多いです。

例えば、頭皮の中や洋服で隠れるような場所にある方は、今でもあまり気にしていない方が多いのではないでしょうか。表皮母斑の中でも、表皮の形成過程で中枢神経系や骨格系などの異常と共に発生したもの「表皮母斑症候群」と呼ばれます。

また、ほとんどの表皮母斑は「癌」に移行することはありません。しかし、臓器に合併症を引き起こす場合やまれに癌化することもあります。また、かゆみなどの症状が出る場合にも治療が必要です。

表皮母斑の原因表皮母斑

表皮母斑は「生まれつきのあざ」ですが、ここではどのような原因でそれが形成されるのかご紹介します。

表皮母斑の成り立ち

表皮母斑

皮膚は何層もの層が連なってできています。普段私たちが直接触れているのは「表皮」と呼ばれます。また、その下には「真皮」と呼ばれる毛細血管や細かい神経、汗腺などが通っている層があります。

表皮母斑とは、お腹の中で胎児が皮膚を形成する際に、真皮の毛細血管が異常に広がったり、増えたりすることが原因で形成されます。そのため、成長に合わせて表皮母斑も色が濃くなる、褐色化する、または盛り上がってくる(腫瘤)ように変化します。

遺伝的な要素

赤ちゃんが母体にいる間に細胞の一部に異常が生じることはよくあります。「うまれつきのあざ」も同じであり、何らかの変化により母体にいる間に皮膚細胞が変異しあざができたと考えられます。

また、赤ちゃんの遺伝子の元である精子や卵子の中には変異しにくいため、基本的には両親の「あざ」は遺伝しないのが一般的です。ただ、例外的な場合もあり、その場合には父や母と同じ体の部分に「あざ」ができやすくなります。

病理的要素

表皮母斑は皮膚細胞の異常な増殖により起こり、「顆粒変性」と呼ばれる状態を伴うこともあります。顆粒変性とはケラトヒアリン顆粒と呼ばれる細胞内の物質が異常に大きくなることにより起こります。

そのほとんどの原因は、ケラチンたんぱく質の遺伝子内に異常をきたしているためであり、リンパへの浸潤や角質層の不全角化などの問題を引き起こす原因になります。

表皮母斑の種類

表皮母斑

表皮母斑には3つの種類があります。ここではそれぞれの形状や特徴についてお伝えします。

限局型(疣状母斑:ゆうじょうぼはん)

あざが1つまたは複数固まってできています。体の色々な場所にできる可能性があります。色は比較的浅いカフェオレ色からイボのような濃い色までさまざまです。

広範型(列序性母斑・線状母斑)

四肢や体幹で線状に並ぶあざです。表面はなめらかなものからブツブツしたものまでその形状には違いがあります。首筋や脇腹などは目立つため、取り除く場合が多い表皮母斑の種類です。

炎症型

あざは硬い淡紅色で、首筋などに湿疹ができたように線状に配列し強いかゆみを伴います。最初は目立たず、徐々に赤さやかゆみが酷くなってくることが多いです。

また、頻度は低いのですが思春期以降に「続発性腫瘤」が発生することがあります。良性と悪性の両方の可能性があり、稀にですが中枢神経系、骨格系の異常と組み合わさり症状に現れる場合があります。

表皮母斑以外のあざについて

表皮母斑

赤ちゃんやお子さまのあざには表皮母斑のほかにもさまざまな種類の「あざ」があります。ここではその代表的なものの特徴を交えて説明していきます。

単純性血管腫・サーモンパッチ

赤ちゃんやお子さまのおでこやまぶたの上または唇などにできる赤あざの1種す。新生児の30%に見られますが、そのほとんどが一時的であり、1歳半までには薄くなってしまいます。顔の目立つ場所や1歳半以降もあざが消えない場合には治療を行います。

太田母斑(顔の青あざ)

顔にできる青あざが特徴です。殴られたような青みを帯びているため、外傷性のあざに似ており保護者の方にとっては神経質になるあざの1種です。あざの色はメラニンの広がりにより、青色から黒色に近い色までと異なっています。

異所蒙古斑

蒙古斑は赤ちゃん特有の尾てい骨上にできる青あざの1種です。蒙古斑は蒙古系の人種にできると言われていましたが、最近では日本人や中国人などの蒙古系人種以外でも、黒人や白人の赤ちゃんにも出ることが分かっています。

その蒙古斑のような青あざが体中に出る場合を「異所蒙古斑」と言います。下半身に多く出ますが、赤ちゃんによっては全身にまで及ぶこともあります。小学校に入るまでには薄くなっていきますので、治療は経過観察が一般的です。

まれに大人まで残ることもありますが、ズボンや洋服などで隠れる場合も多いので、男性などは治療をせずそのまま放置している方もいます。

脂腺母斑

頭にできる黄色いあざです。頭皮にできた場合には毛髪が生えず、イボ状に隆起してくるため治療が必要です。イボのように盛り上がった脂腺母斑を「腫瘤」と呼びます。腫瘤はお子さまにはまれであり、成人した後にできる場合が多いあざです。

外科手術

表皮母斑

表皮母斑の大部分は成長と共に大きくなりますが「癌化」もせず、痛みやかゆみもありません。しかし、場所や経過観察の結果によっては治療を受ける方も多くいます。ここでは、どのような外科的な治療があり、どのくらいの時期から始めたらいいのかをご紹介します。

切除手術

治療をするかどうかは、その見た目や成長に伴い腫瘤が発生するかどうかによっても異なります。基本的には外科手術で表皮母斑の部分を切除するのが一般的な治療方法です。

「切除手術」に関しては局所麻酔で行います。5〜20分程度で完了しますが、全身麻酔が必要な場合が多く入院が必要です。手術後は1-2週間後に抜糸を行います。

手術のメリットは再発が少ないですが、皮膚移植が必要であればその「縫合跡」や移植元の皮膚の部分が傷つくというデメリットがあります。

皮膚進展法

「皮膚進展法」とは、エキスパンダーと呼ばれる溶液を皮膚の下に埋め込み、取り除いた部分の回復をサポートします。エキスパンダーを入れるため、複数回の手術が必要です。 

レーザー治療

「レーザー治療」とは、表皮母斑をレーザーで削る治療法です。あざにより使われるレーザーの種類も違いますが、痛みは少なく、麻酔クリームや麻酔テープを使用しますので、お子さまの負担も考慮した治療方法です。

治療はあざの種類によって違いますが、10分以内で終了します。そのため、小さな範囲であれば日帰りで手術を行うことができます。治療後の赤あざは1週間、青・黒あざは2週間程度軟膏を塗布しガーゼで保護します。

レーザーのメリットは、あざが小さければ負担も少なく通院だけで済むことです。デメリットは再発する可能性があるため、再び手術をしなくてはいけないことです。

治療を始める時期

外科手術は1歳以上のお子さまから可能です。ただし、その方の年齢やあざの大きさによっては全身麻酔が必要となるため、お子さまの場合には医師の判断やアドバイスに従ってその時期を見極めたほうがいいでしょう。

保険適用について

表皮母斑

ここでは、表皮母斑の治療に保険が適用されるのかどうかを説明します。

基本的にあざは保険適用

基本的にはあざは保険適応にて治療可能です。特にお子さまに関しては、各市町村や自治体からも治療補助が出る場合があるため、基本的に保険と補助金で医療費は請求されないことが多いです。そのため、お住まいの市町村や病院に料金の補助制度や保険適用についてのどうか問い合わせをしておく方がいいでしょう。

あざを切除したあとのケア

切除手術は保険適用ですが、場所や体質によっては跡が残ります。あざや手術方法によっても違いますが、その後のケアにより手術跡はかなり目立たなくすることも可能です。

また、形成外科や美容外科では保険適用外ですが、手術後の跡を目立たなくする治療も行っています。手術後も見た目が気になる方は、担当した医師や病院に相談してみてください。

まとめ

表皮母斑とは、「生まれつきのあざ」のことです。お母さんのお腹の中にいるときに皮膚細胞が作られますが、その際に皮膚の細胞が何らかの原因により異常に増えてしまうことにより起こります。

基本的に表皮母斑は茶色のうすいあざであり、痛みやかゆみもありませんが、成長と共に肥大します。「癌化」することも稀ですので放置しておく方も多いです。ただし、あざができる場所によっては目立つこと、まれに腫瘤ができてしまうという理由から治療を行う方もいます。

治療方法はあざの切除が一般的ですので、外科的な手術になります。1歳以上から手術を行うことが可能です。範囲が小さければレーザー手術により日帰り手術も可能ですが、全身麻酔をする場合も多いため、入院が必要となる場合もあります。

手術は保険適用の治療です。また、お子さまの場合には各市町村からの補助金もありますので、治療を受ける前には病院や市町村に問い合わせてみるのをおすすめします。

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