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皮膚移植とは?簡単にわかりやすく解説!完治までの期間、治療できる症状や種類について

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院長 黒木 良和

九州大学医学部卒
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授

皮膚移植という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

日常の中で怪我をした時は数日経つと治っていると思います。ですが、傷が大きく、重症な時には自然に治ることはなく生命の危機にもなります。

そのような場合に皮膚移植が行われます。

皮膚移植とはどのようなことをするのでしょうか?

皮膚移植について簡単に分かりやすく解説し、完治までの期間、治療できる症状や種類についても解説します。

皮膚移植とは?

皮膚移植

皮膚移植とは、皮膚を移植することで創を塞ぐことです。外傷や熱傷による著しい皮膚の欠損や、深達性のある創に対しては生体包帯の役割を果たします。皮膚移植をすることで体液の漏出やエネルギーの損失を防ぎ、外界からの生体の保護や感染を防止し全身状態の改善を図ります。

移植というと臓器の移植を思い浮かべると思いますが、臓器の移植は他人の臓器を移植することが可能です。ですが、皮膚移植は本人の皮膚を使用しなければいけません。一卵性双生児では皮膚移植の成功例もありますが、他人の皮膚では免疫拒絶反応を起こしてしまい生着することができません。

近年、皮膚移植の技術は向上し傷跡の修正だけではなく、形成的にも皮膚移植を行うようになっています。皮膚移植の技術は向上していますが、使用する皮膚は自分の皮膚でなければいけないことは変わりありません。

生体包帯とは、生理的に生体に近い人工皮膚で一時的に創を覆う手法のことです。皮膚移植の範囲が狭ければ自分の皮膚を移植し創を覆うことは可能ですが、熱傷などの範囲が大きい時は生体包帯で創を覆い、順次自分の皮膚を採取し生体包帯と置き換えていきます。

皮膚移植の種類は?

皮膚移植

皮膚移植の種類は3種類あり以下になります。

自家移植

自家移植は、本人の皮膚を見えないとことから採取し、創に移植することです。皮膚移植をする場合は性質の似ている皮膚を使用します。顔の場合は耳の後ろ、首の付け根から皮膚を採取し移植します。

しかし、熱傷や外傷が広範囲の時は自家移植ができない場合があります。

同種移植(他家移植)

同種移植は、熱傷や疾患により広範囲の皮膚を失ってしまい、自家移植が困難な場合に行われます。同種移植はスキンバンク(冷凍同種皮膚)や家族の皮膚を使用します。

臓器の移植と異なり,同種移植された皮膚は最終的に1週間から10日で脱落してしまいます。ですがその期間に創の表面に肉芽が形成されるため、培養された自分の皮膚が生着しやすくなります。

異種移植

異種移植は、同種移植と同様の理由で行います。ですが、使用する皮膚はヒトではなくブタなどの皮膚を使用します。

異種移植も同種移植と同様に、移植された皮膚は最終的に1週間から10日で脱落してしまい、その後培養された皮膚を移植する必要があります。

以上、3つの皮膚移植の種類について解説しましたが、移植した皮膚を永久的に生着させるには必ず自家移植をしなければいけません

皮膚移植の対象は?

皮膚移植

皮膚移植はどのような場合に行うのでしょうか?

以下で解説します。

熱傷

熱傷とはやけどのことです。人間の皮膚は大きく3層に分かれ、表面から「表皮」、「真皮」、「皮下組織」となります。熱傷はⅠ度からⅢ度まであり、Ⅲ度が最も重症です。Ⅱ度の浅い熱傷では自然に治癒します。ですが、Ⅱ度の深い熱傷からⅢ度の熱傷では自然治癒せず皮膚移植が必要になります。体の30%以上に深い熱傷を負ってしまった場合は、自分の皮膚だけは皮膚移植が間に合わないため、自分の皮膚を採取して培養した培養表皮を移植する必要があります。

先天性巨大色素性母斑

母斑(ぼはん)とは黒褐色のアザやホクロのようなもので、色素が皮膚の表皮と真皮の間、真皮の中にたまっている状態です。先天性巨大色素性母斑とは生まれつきの母斑で、頭や体、四肢に現われます。成人では直径20㎝以上、幼児では頭は9㎝以上、体は6㎝以上のアザをいいます。

先天性巨大色素性母斑は将来に悪性黒色腫(皮膚がん)を発症する恐れが数%あり、半数が3歳までに発症するといわれています。そのため母斑部分を早期に切除することが望ましいです。母斑が小さい場合は切除して縫合することや、キレイな皮膚を移植することで治療が可能です。しかし、母斑が大きい場合や手術が難しい場所にある場合は、切除後に培養表皮を移植する必要があります。

表皮水疱症

表皮水疱症とは、日常生活の少しの刺激や摩擦で皮膚や粘膜にただれや水ぶくれを生じる遺伝性の皮膚病です。皮膚の表皮と真皮の間に接着の役割を持つ基底膜があり、表皮水疱症は基底膜を構成するタンパク遺伝子の変異により起こるといわれています。

表皮水疱症は大きく3つの型に分類されます。

①表皮内に水疱ができる「単純型」

②表皮と基底膜の間にできる「接合部型」

③真皮にできる「栄養障害型」

表皮水疱症には、ただれや水ぶくれの他に、瘢痕や栄養不足、貧血などさまざまな症状があり、対症療法が行われます。

「接合部型」と「栄養障害型」の治療には皮膚を切除した後、培養表皮を移植することがあります。

白斑

白斑とは、皮膚の基底膜に分布する色素細胞が何らかの原因で減少・消失し白くなる病気です。いくつかの治療法がありますが、症状のある皮膚を薄く削り整え正常な皮膚を移植することで改善するといわれています。

タトゥー除去

皮膚移植

タトゥー除去は、タトゥー部分の皮膚を浅く削り自身の臀部などから皮膚を自家移植する方法です。

広範囲のタトゥーを除去することができます。

しかし、移植された皮膚は周囲の皮膚と質感が異なるため、目立ってしまう場合があります。また、タトゥーを除去した場所と皮膚を採った場所の2箇所に傷跡が残る場合があります。

傷跡修正

傷跡修正は以下の方が適応になります。

  • 事故で受けてしまった傷跡
  • リストカットの跡
  • 手術後の跡
  • ニキビ跡
  • 妊娠線、肉割れ

皮膚移植により傷跡などを目立ちにくくすることは可能ですが、傷跡を完全に修正する方法はありません。

皮膚移植は保険適用になるのか?

皮膚移植

培養皮膚の移植は、「重症熱傷」「先天性巨大色素性母斑」「表皮水疱症(接合部型と栄養障害型に限る)」の治療で保険が適用されます。また、高額療養費制度の対象にもなりますので、入院時の費用負担はさらに軽減されます。

しかし、タトゥー除去や美容目的の傷跡修正では保険が適応されません。

皮膚移植を受けたいが保険適応になるかどうか分からない方は、一度受診して確認することをお勧めします

皮膚移植術の方法①

皮膚移植

まずは皮膚移植の中でも皮膚の欠損部を自分の皮膚で補填する方法を解説します。

遊離植皮術

血流を途絶した皮膚を移植する方法で、移植する真皮部位の厚さにより、大きく分層植皮術、全層植皮術の2つに分類されます。

分層植皮術

分層植皮術は、表皮から真皮中層を移植する方法になります。

採皮した皮膚をメッシュ状にすることで生着率を高め、広範囲への皮膚移植を可能とする植皮術も行われます。分層植皮術は早期の創閉鎖に使われることが多いです。

全層植皮術

全層植皮術は、真皮全てを移植する方法になります。

真皮全てを移植するため、手術操作も繁雑になり生着させることが大変になります。

しかし一度生着すると、よくなじみ、耐久性もあります。全層植皮術は拘縮の解除として使われることが多いです。

有茎皮弁植皮術

有茎皮弁植皮術は、皮弁を移植する時に採取する組織を完全に切り離さずに一部連続させ、血流を維持しつつ移植部位に縫合固定する方法のことです。

約3週間後に移植部位と皮弁の吻合が完成し、移植部位からの血流で皮弁が機能できる状態になると茎部を切り離します。

例として手の手術時に、お腹の皮膚を手に移植する手術がよく行われます。この場合、手を約3週間お腹に縫いつけた状態になり、肘や肩を長期間動かせなくなってしまいます。

そのため、茎部を切り離した後は関節が固くなってしまうことがあります。

※組織を完全に切り離さずに一部連続させることを皮弁の茎といいます。

皮膚移植術の方法:培養皮膚②

皮膚移植

培養皮膚は、人の皮膚細胞を採取し、増殖・培養させた人工的な皮膚になります。損傷部位が大きい場合、培養皮膚を移植し皮膚を再生させます。培養皮膚は、重症熱傷や床ずれ、糖尿病性潰瘍や巨大色素性母斑、瘢痕や刺青などへの治療に使用されています。

また、自身のメラニン色素も含まれるため皮膚の色調を改善する治療にも使用されています。

しかし、培養皮膚は自家移植の皮膚と同じ品質の皮膚を得ることはできません。原因は真皮の再生が不十分であることといわれています。近年では、京都大学の山中教授がiPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究で成功したことで、培養皮膚も再生医療の1つとして注目されるようになっています。

皮膚移植後の経過・完治までの期間

皮膚移植

皮膚を遊離移植した場合の経過は以下になります。

1~2日後:移植した部位の層面より漏出した血漿により栄養・湿潤状態が保持される

3~4日後:移植片と移植床の毛細血管が直接吻合する

5〜8日後:血流が再開することで皮膚移植した部位が生着します。

4日ほどまでは虚血状態となります。移植皮膚の生着のためには移植片と移植床に血管の直接吻合が必要となり、移植床には良好な血流が求められます。

その後、術部が乾燥するまで2ヶ月程度かかり、ガーゼ保護と軟膏処置が必要になります。

皮膚移植により起こりうること

皮膚移植

術後感染

皮膚移植の手術後、皮膚の常在細菌などにより感染が発生する場合があります。感染してしまうと、移植された皮膚が剥がれてしまう可能性があります。

術後感染が発生した場合には、抗生剤を投与し、創を洗浄します。

皮下出血

手術により皮下出血を生じる場合がありますが、3週間ほどで目立たなくなります。

皮膚を採取したところに傷跡が残ってしまう

皮膚を採取したところに2cm程度の線状の傷跡が残ってしまいます。

耳の後ろから採取した場合、見た目で目立つことほとんどないといわれています。

また脇から採取した場合は、線状の傷が残ります。採取後2〜3ヶ月赤みがありますが、その後段々目立たなくなると言われています。

色素脱失

皮膚移植後、部分的に皮膚が白くなってしまうことがあります。

汗腺や皮脂腺、毛の減少

汗腺や皮脂腺、毛は表皮ではなく、真皮にあります。そのため、表皮のみの移植の場合は汗腺や皮脂腺、毛がなくなってしまいます。

技術の進歩によりさまざまな症状に皮膚移植が適応になります

皮膚移植

皮膚移植について理解できましたか?

皮膚移植は外傷や疾患の治療だけでなく、タトゥーや傷跡修正の目的でも行われています。また培養皮膚の技術の向上により、広範囲の熱傷の治療も可能になっています。

手術方法は外傷や疾患の状態によってさまざまありますが、手術による影響は少なからずあります。

皮膚移植を検討している方は、一度病院を受診し皮膚移植が可能なのか確認してみましょう。

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