肌細胞が活性化すると若返る?肌細胞の働きと活性化でコラーゲンを生成する仕組みを徹底解剖!
院長 黒木 良和
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授
目次
女性にとって美は永遠の課題であり、美しく居続けることがどれだけ大変なことか、痛感する方がほとんどです。そんな中、肌細胞の活性化が若返りにつながるのではないかという考え方があります。
肌細胞が活性化することがなぜ若返りにつながるのか、肌細胞の働きや活性化の仕組みなどをご紹介します。
そもそも肌細胞とは何か
そもそも肌細胞とはどのようなものなのか、解説します。
肌細胞の別名は真皮線維芽細胞
肌細胞はわかりやすく表現した名称であり、正式名称は真皮線維芽細胞です。真皮線維芽細胞は、「コラーゲン」、「ヒアルロン酸」、「エラスチン」を生成し、お肌のハリなどを保ち続ける効果があります。肌細胞が常に活発であれば、これらの成分が常に生まれ続けるわけですから、お肌にとってはとてもいい状況です。
肌細胞は補修のための材料に使われる
肌細胞は無尽蔵にあふれ出てくるものではなく、基本的にコラーゲンやヒアルロン酸などが減ってきた場合、もしくは何らかの要因で壊された場合に回復させるときに用いられます。ですので、コラーゲンなどが減った場合に補う分を作り出すのが肌細胞なのです。
肌細胞はどのようにコラーゲンを生み出すのか
肌細胞がどのようにコラーゲンなどを生み出すのか、その仕組みについてご紹介します。
真皮幹細胞の存在
肌には2つの幹細胞があり、1つは「真皮幹細胞」、もう1つは「表皮幹細胞」です。幹細胞は自力で分裂ができるなど、再生医療にも用いられる重要な細胞です。コラーゲンを生み出すのは真皮幹細胞で、これが分裂していく中で線維芽細胞に変化していきます。
この線維芽細胞がコラーゲンを生み出すなど、肌のハリ・ツヤを支える原動力となります。そのため、線維芽細胞も当然大事ですが、真皮幹細胞の存在もとても大きく、コラーゲンには欠かせません。
肌細胞は20代をピークに減っていく
肌細胞は生まれてから20代まではどんどん増えていきますが、20代をピークとして下がっていきます。「若い時はピチピチの肌をしていたのに…」と嘆く方も多いでしょうが、肌細胞の数で言えばその嘆きは当然で、以前はたくさん肌細胞があったのに、年齢を重ねて減っていくわけですから、「ピチピチの肌」は見込めなくなります。
真皮幹細胞は年齢を重ねるたびにどんどん減っていくことが様々な研究で明らかになっているほか、真皮幹細胞の活動を支える「成長因子」の数も同じように減っています。
では肌細胞がどれくらい減ってしまうのかですが、50代になると20代と比べ、半減、3分の1まで減少など色々と言われています。少なく見積もっても肌細胞は半分減ってしまうため、外部からのダメージを補いきれない状況であることは間違いありません。
肌細胞はなぜ減ってしまうのか
肌細胞はそもそもなぜ年齢を重ねて減ってしまうのか、その主な理由をまとめました。
年齢を重ねて毛細血管が消えていくから
私たちの身体には大きな動脈や静脈のほか、無数の毛細血管があります。この毛細血管のおかげで身体全体に栄養素を届け、温かい血液を送り込んでいます。肌細胞も毛細血管からの栄養素などで保ち続けており、肌細胞と毛細血管はとても重要な関係性なのです。
ところが、毛細血管は年齢を重ねていく中で次第に老化が起こり始め、特に40代後半から一気に減り始め、60代を過ぎた頃には20代の時と比べて半分近く消えてしまうと言われています。別名「ゴースト血管」とも呼ばれており、これが年齢を重ねることで肌細胞が減ってしまう要因なのです。
活性酸素の存在
細胞の中にはミトコンドリアがあり、このミトコンドリアのおかげで私たちは生きることができます。ミトコンドリアは酸素を吸収してエネルギーを生み続けており、酸素は欠かせない存在です。しかし、酸素も紫外線などの要因が加わることで活性酸素になってしまい、この活性酸素が様々な場所に攻撃を加え、老化を引き起こしてしまいます。
肌細胞も例外ではなく、活性酸素によって機能の低下を招き、肌細胞の減少を促す結果を招きます。活性酸素はストレスや喫煙など日常の生活の中で起こりうる事柄が要因となりやすいので、不摂生によって活性酸素を作り出すことが言えます。
コラーゲンの糖化
コラーゲンの存在が肌のハリ・ツヤに欠かせないことは間違いありませんが、コラーゲンが糖化することで肌の老化を加速させてしまうため、注意が必要です。糖化とは糖とタンパク質が結び付いてしまう状態で、炭水化物やブドウ糖など糖質がタンパク質と結びついてしまうことで、コラーゲンが持つ肌を支える枠組みが崩され、ハリなどが保てなくなります。
肌細胞の減少は食い止められる?
肌細胞をこれ以上減らしたくないと必死に対策を考える方もいるでしょう。では、自助努力で肌細胞の減少は食い止められるのか、ご紹介します。
生活習慣の見直し
活性酸素の存在が肌細胞の減少を誘発することは明らかなため、結論から言えば、いかに活性酸素を減らせるかが重要な要素となります。そのためにも生活習慣の見直しが必須です。例えば紫外線は肌細胞への攻撃だけでなく、活性酸素を多く生み出す要因にもなります。そして、シミなどの原因も生み出すため、紫外線対策に取り組むだけでも十分な対策になるでしょう。
また適度な運動をすることや適度な睡眠をとること、ストレスを抱えないこと、禁煙を行うことなど、できることを1つずつこなしていくだけで肌細胞の減少は食い止められます。本来、年齢を重ねればみんなで肌細胞が減っていき、同じような老いが見られるわけですが、同じ年齢でも人によっては肌のツヤがまるで違うケースがよくあります。これも生活習慣などを見直しているかどうかが要因となっています。
抗酸化作用がある食べ物を取り入れる
活性酸素に対抗するには、抗酸化作用がある食べ物を取り入れることで食い止めることができます。抗酸化作用がある栄養素の代表例はベータカロチン、ビタミンC、ビタミンEです。ビタミン系は体内で作り出すことができないため、食べ物で取り入れるしかありません。またサプリメントを活用し、足りない栄養素を補うこともできます。
お肌といえばビタミンBを思い浮かべる人もいるはずですが、ビタミンBももちろん必要です。ビタミンBは活性酸素を誘発する喫煙などですぐに使われてしまう栄養素なので、いかに多く取り込めるかがポイントになります。
肌細胞を活性化させるには再生医療
基本的に減ってしまった肌細胞を、何かを食べるなどして増やすことはほぼ不可能です。では、肌細胞を増やして活性化させるには何が必要か、それが再生医療です。
再生医療を通じてどのように肌細胞を増やし、活性化させるのか、その方法をまとめました。
肌細胞を補充する
肌細胞を活性化させるのに用いられるのが「肌細胞補充療法」です。これは肌細胞を移植することで再び以前の状態に回復させることができる方法です。最初に肌細胞を少し採取し、この肌細胞を培養していき、増やします。そして増やした肌細胞を、補充したい部位に注入することで、肌細胞がその中で増えていき、ツヤやハリが復活するという代物です。
ヒアルロン酸注入の場合は一時的にツヤやハリが復活しますが、体内に吸収されてしまい、効果は意外とすぐ消えますが、肌細胞の場合は吸収されるものではないため、長く残り続けてくれます。
この方法だと顔全体だけでなく、年齢が出やすいとされる首や手などにも施術が行えるため、より見た目の美しさを保つことが可能です。
PRP皮膚再生療法
PRP皮膚再生療法は、自らの血液から血小板などを取り出して、気になる部位に注入して再生させていく治療法です。血小板は傷ができた際に、血を止めて傷をふさぐ役割を担っています。また血小板には成長因子を生み出す力もあります。成長因子といえば真皮幹細胞と連携することで多くの線維芽細胞を生み出し、コラーゲンを生み出すことでも知られています。
肌の再生医療にかかる必要はどれくらいか
肌の再生医療は当然のことながら保険適用がなされず、すべてが自由診療となります。自由診療の場合はクリニック側が自由に値段設定を行えるのですが、だいたいどれくらいかかるものなのか、ご紹介します。
肌細胞補充療法
肌細胞補充療法の場合、細胞を補完する費用から抽出する費用、増やして注入する費用などが様々かかって、だいたい100万円程度かかります。移植する量が1cc単位で代わり、1cc多く入れるだけで10万円以上かかってしまいます。皮膚をとって、細胞を取り出すのに初期費用がかかり、これがだいたい数十万円程度、移植する場所や量などを加味すると100万円以上はかかるのが普通です。
あくまでも初回や2回目などにかかる費用で、細胞が残っている場合には細胞を移植する費用だけがかかります。保管料だけで毎月1万円ほどかかりますが、数十万円程度で移植できる形となります。
PRP皮膚再生療法
PRP皮膚再生療法の場合は部位によって料金が異なるケースがあり、1回あたり数万円から10数万円で、3回1セットで10数万円から50万円弱という値段設定にしているクリニックもあります。また顔全体に注入して25万円というところもあるなど、かなりバラツキがみられます。
PRP皮膚再生療法はニキビ跡を目立たなくさせるのにも用いられるなど、今まで気になっていた部位を改善させるのにも期待が持てるため、費用対効果を感じさせる治療法と言えそうです。
まとめ
肌細胞の活性化によって、肌のハリ・ツヤを保ち続けることができるほか、首や手など、今までだと年齢を感じさせやすい部位にも治療ができ、より若々しい姿を維持できるようになっています。そのためには再生医療の活用だけでなく、日々の生活習慣の改善も重要です。
いつまでも若く見える人は一定の努力をしており、若さを保ち続けるためには、現状の生活習慣を見直してみることから始めてみてはいかがでしょうか。