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先駆け審査指定制度について徹底解説!制度の背景や審査期間、条件付き早期承認制度との違い

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院長 黒木 良和

九州大学医学部卒
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授

目覚ましい進歩を遂げる医療では医薬品や医療機器等の早期実用化が大きな課題です。

日本には、日本で開発した医薬品や医療機器等を世界に先駆けた実用化を目指す「先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)」という制度があります。

ここでは、先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)について内容や特徴などを徹底解説します。

先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)とは

先駆け審査指定制度

先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)

先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)とは、厚生労働大臣から『先駆的医薬品等』と指定を受けた医薬品、医療機器および再生医療等製品は、薬事承認のための相談・審査を優先的に受けることができるという制度です。この制度を活用することで、『先駆的医薬品等』の迅速な実用化を図ることができます。

先駆的医薬品等

先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)を適用するためには、『先駆的医薬品等』の指定を受ける必要があります。『先駆的医薬品等』は、治療法または診断法に画期性があることや、重篤な疾患に対して極めて高い有効性があるなどの要件に合致した医薬品、医療機器および再生医療等製品を厚生労働大臣に申請することで指定を受けることができます。

先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)の背景

先駆け審査指定制度

厚生労働省は、平成26年6月17日に革新的医薬品等の実用化促進に向けた「先駆けパッケージ戦略」を公表しました。

「先駆けパッケージ戦略」では、世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を図ることを目的に、基礎研究から臨床研究・治験、承認審査、保険適用、国際展開までの対策を一貫したパッケージとして推進するとしています。これを受けて、厚生労働省は、平成27年度から「先駆け審査指定制度」として試行的な取り組みをおこない、令和元年の法改正により、新たに「先駆的医薬品等指定制度」が創設されました。

『先駆的医薬品等』指定の要件

先駆け審査指定制度

『先駆的医薬品等』の指定を受けるためには、以下の4つの要件をすべて満たすことが必要となります。

治療法または診断法に画期性があること

原則として、以下のいずれかに該当する医薬品等であることを条件としています。

  • 既存の医薬品等と異なる新しい医療効果を及ぼす仕組みであること。
  • 既存の医薬品等と同じ医療効果を及ぼす仕組みであっても開発対象とする疾患への適用が初めてであること。
  • 革新的な薬物送達システムを用いていること。

重篤性の疾患を対象にしていること

以下のいずれかの疾患に該当するものであることを条件としています。

・生命に重大な影響がある重篤な疾患

・根治療法がなく症状(社会生活が困難な状態)が継続している疾患

対象疾患に対して極めて高い有効性または安全性があること

対象の疾患に対して、既存の治療法もしくは診断法がない、既存の治療法や診断法と比べて有効性の大幅な改善が見込まれていたり、著しい安全性の向上が見込まれることが条件となります。

世界に先駆けて日本で早期開発および承認申請する意思や体制が備わっていること

日本における早期開発を重視し、世界に先駆けて日本で承認申請される予定のものであり、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が実施している先駆け総合評価相談を活用して承認申請できる体制および迅速な承認審査に対応できる体制を備えていることが条件となります。

ただし、上記の4つの要件をすべて満たす場合であっても、指定を目指す医薬品等が、既に『先駆的医薬品等』に指定されている場合や、既に薬事承認を得ている医薬品と同等の効果である場合は、原則として『先駆的医薬品等』の指定を受けることができません。

『先駆的医薬品等』の指定手続き

先駆け審査指定制度

指定の方法

先駆的医薬品等の指定は、厚生労働大臣が、厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会の意見を聴いたうえで行います。指定が行われる機会は、当面の間は、年に2回程度(概ね4月及び10月)とし、今後審査体制の状況に応じ変更するものとされています。ただし、保健衛生上必要な場合には、臨時の指定も行うことがあります。

なお、指定を受けた医薬品等については、厚生労働省ホームページに、指定年月日、名称、対象疾病並びに指定申請者の氏名が掲載されます。

指定の相談

先駆的医薬品等の指定を希望する場合、指定申請の前にまずは厚生労働省に指定相談を行う必要があります。指定相談の申込みは随時受け付けられています。

指定相談は、所定の申込書(指定相談申込書)と概要(先駆的医薬品等の指定要件該当性に関する概要)を厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課の指定業務担当者にメールまたはFAX等で送ることで申し込むことができます。

指定申請について

指定相談を実施後、特に問題がなければ、厚生労働省の担当者の指示に従い、以下の申請資料を厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課宛てに提出して指定申請を行います。

 (申請資料)

・指定申請書

・申請書の添付資料

ア 作用機序又は原理に関する資料

イ 医療上の必要性に関する資料

(ア)病因、症状等対象疾病に関する資料 

(イ)類似の医療機器等の有無、治療方法の有無など医療の現状に関する資料

ウ 毒性、薬理作用等に関する試験成績の概要

エ 臨床試験の試験成績の概要

オ 本邦及び外国における開発計画の概要

カ 先駆的医療機器等の指定要件該当性に関する概要

 

審査期間の優遇

先駆け審査指定制度

『先駆的医薬品等』に指定されると、以下の優遇措置を受けることができます。優遇措置は、医薬品等の迅速な実用化を目指した制度であることから、承認審査の期間短縮が中心となります。

優先相談

医薬品等の品質、有効性および安全性を審査するPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)で実施されている対面助言で優先的な扱いを受けることができます。通常2カ月ほどかかる対面助言が1カ月程度で実施されます。

事前評価の充実

承認申請から承認までの期間を短縮させる(医療機器の場合は6か月以内)ために、承認申請前からPMDAの職員をコンシェルジュとすることができ、必要な部署との各種の連絡調整をスムーズにおこなうことで、実質的な審査の前倒しをすることができます。

優先審査

指定を受けた医薬品等は、「医療上特にその必要性が高いと認められるもの」に該当するとして、通常12カ月ほどかかる承認審査を目標6カ月に短縮する、優先審査の扱いを受けることができます。

審査パートナー制度(コンシェルジュ)

PMDAの職員が、専任のコンシェルジュとなり、審査対象となる医薬品等の開発進捗管理の相談や、承認申請者および承認審査の関係部署との調整を行います。

条件付き早期承認制度との違い

条件付き早期承認制度とは

条件付き早期承認制度は、企業による医薬品等の開発の予見性を高め、早期実用化を推進することを目的として、平成29年10月20日に、厚生労働省が実施を始めました。

条件付き早期承認制度とは、検証的臨床試験以外の臨床試験等の成績で一定の有効性や安全性が示されていると判断されるものの、患者数が少ない等により検証的臨床試験の実施が困難な重篤性のある疾患に対して医療上の有用性が高い医薬品等を対象とした制度です。

条件付き早期承認制度が適用された医薬品等は、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の該当性相談制度を活用することで優先審査の対象となり、審査期間を短縮することができます。ただし、条件付き早期承認制度が適用された医薬品等は、製造販売後に当該医薬品等の有効性、安全性の再確認等のために必要な調査等を実施すること承認の条件となるため、この点が「条件付き」といわれるところです。

先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)と条件付き早期承認制度の違い

先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)と条件付き早期承認制度は、いずれも医薬品等の早期実用化を目指す制度で、優先審査を受けられることが共通しています。

先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)は、承認申請の前に対象品目の指定を受けることでPMDAの対面助言を優先的に実施して早期に申請資料の準備にとりかかるのに対して、条件付き早期承認制度は、安全性を確認しつつ有効性の瀬踏みをする探索的臨床試験等の終了後にPMDAで「医薬品条件付き早期承認品目該当性相談」を実施して申請資料の選定となります。

このように、承認申請の準備の進め方が異なり、先駆け審査指定制度(先駆的医薬品等指定制度)の方が承認申請に向けた準備の着手が早いといえます。

そのため、PMDAは、条件付き早期承認制度の該当性相談の対象を「先駆け審査指定制度の対象医薬品及び希少疾病用医薬品を除く医薬品」としています。

先駆的医薬品等の指定の取消しについて

先駆け審査指定制度

以下のケースに該当した場合、先駆的医薬品等の指定が取り消されます

試験研究等を中止する場合

先駆的医薬品等の指定を受けた企業等が、その先駆的医薬品等の試験研究、製造販売または製造を中止しようとするときは、法律に基づいて、所定の書式を用いて、速やかに厚生労働大臣へ中止の届出を出すが必要があります。

指定が取り消されるケース

中止の届出を出すと、厚生労働大臣は、先駆的医薬品等の指定を取り消します。

また、次のいずれかに該当するときは、法律に基づき指定を取り消すことがあります。

  • 指定された医療機器等よりも先に他の医療機器等が国内で承認されたとき。
  • 検証的臨床試験における結果等から、極めて高い有効性または著しい安全性の向上が見込まれないとき。
  • 指定された医療機器等について、世界に先駆けて又は同時に日本で承認申請を行わなかったもしくは、十分な事前評価を受けずに承認申請された又は承認申請資料に相当の瑕疵があると判明した結果、我が国での早期の開発が達成できなくなった場合により指定要件4を満たさなくなったとき。
  • 同一の医療機器等が海外で先に承認されたとき。
  • 指定申請書の虚偽記載等不正があったと認められるとき。
  • 正当な理由なく先駆的医療機器等の試験研究又は製造販売が行われないとき。
  • 指定者について法その他薬事に関する法令で定めるもの又はこれに基づく処分に違反する行為があったとき。

なお、指定が取り消された場合、厚生労働省のホームページに掲載されます。

まとめ

先駆け審査指定制度

いかがだったでしょうか?医薬品の審査期間の短縮は、民間企業にとってはビジネスチャンスになり、国民にとっては新しい有用な医療が迅速に受けられるチャンスとなります。これからも民間企業と国の連携が進むことで、新しい医薬品が迅速に供給されることに期待されます。

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