幹細胞治療の若返り効果の可能性はどのくらい?点滴や注射の違いや効果や副作用、費用相場について徹底解説!
院長 黒木 良和
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授
目次
若く美しくありたい、そう願う女性は多いでしょう。
そこで美容業界の主流になると注目されているのが、自分の細胞を利用した幹細胞治療です。
幹細胞治療は、医療面やアンチエイジング効果などの美容面において、効果が認められています。
今回の記事では、幹細胞治療で、若返り効果の仕組みや具体的にどのような効果が期待できるのかを解説しました。
また、副作用や費用相場などについても詳細に説明していますので、幹細胞治療に興味がある方や検討している方はご参考にしてください。
幹細胞治療とは?
幹細胞治療とは、治療者の体の組織から採取した幹細胞を専用の施設で培養することで増殖させ、それを体内に投与する治療方法です。
幹細胞は、傷んだ皮膚や組織などを根本的に修復できる特徴があるため、美容や病気、疲労などに対して幅広い効果が期待されています。
「そもそも幹細胞とは何か?」「普通の細胞と何が違うのか?」など、疑問をもつ方もいらっしゃると思うので、簡単に説明していきます。
幹細胞の役割
まず、幹細胞とは以下2つの能力を合わせ持った細胞です。
①自己複製能力(細胞分裂によって自分と同じ細胞を作り出す能力)
②分化能力(他の種類の細胞に変化する能力)
通常の細胞は①の自己複製能力しかもちません。皮膚の細胞なら、最後まで皮膚の細胞です。
しかし幹細胞には②の分化能力があるため、血液や皮膚、腸などの様々な細胞に変化できます。
ゆえに幹細胞は、寿命や怪我などで失われた細胞を補充し、組織の機能や形状を保つ役割を担っています。
幹細胞の中でも「間葉系幹細胞」は、皮膚や血管、筋肉などに分化することが知られており、幹細胞治療にはこの細胞が使われます。
なぜ幹細胞に若返り効果があるのか?
幹細胞には複製能力によって増殖する能力と、他の種類の細胞に変化することで細胞を補充し、組織の機能や形状を保つ役割あると説明しました。
幹細胞がその役割をしっかりとこなすことができれば、組織の機能や形状は保たれますが、加齢などによって自己複製能力と分化能力が低くなると、それも難しくなっていきます。
そこで、幹細胞治療によって元気な幹細胞を体に入れることで、組織の機能や形状を正常に保ち、若返り効果が期待できるのです。
幹細胞は線維芽細胞を増やす
特に美容に関わる細胞として「線維芽細胞(真皮線維芽細胞)」があります。
線維芽細胞は皮膚の真皮にあり、コラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどの成分を産生する細胞です。
コラーゲンは真皮に網目状構造を作ることで肌に弾力を与え、ヒアルロン酸は肌の保湿、エラスチンはコラーゲン同士を結びつけ、肌のハリを出す役割があり、どれも美肌のために重要な成分です。
加齢や紫外線によるダメージが原因で、この線維芽細胞の数が減ったりすると、これらの成分が少なくなり、シミ・くすみ・しわのような老化症状が現れてきます。
そこで幹細胞治療により、元気な繊維芽細胞を増やし、コラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどの成分を十分に補充することで、肌の老化を食い止め、若返り効果が期待できます。
幹細胞治療の種類
美容に用いられる幹細胞治療では、繊維細胞治療や脂肪幹細胞注入法など種類があります。
それぞれ説明していきます。
線維芽細胞移植
線維芽細胞移植は、加齢や紫外線などのダメージが原因で減ってしまった線維芽細胞を移植し、元気な繊維芽細胞を増やすことで、肌の老化を食い止める治療です。
線維芽細胞の採取は、体の中の細胞の中で比較的、老化の進行が遅いといわれている耳の後ろからの米粒大の皮膚から行うため、傷口が目立たず残りません。
また、治療で残った線維芽細胞は、冷凍凍結保存することができます。
数年後〜十数年後、凍結保存された線維芽細胞を解凍処理をし、再び治療に用いることが可能です。
脂肪幹細胞注入法
治療者の脂肪細胞と幹細胞を混ぜて注入するという治療法です。
脂肪細胞をそのまま注入する「脂肪注入」は、以前から美容業界では有名な手法として知られています。
脂肪注入の目的は、脂肪組織の補充や乳房のボリュームアップなどがありますが、この治療法の欠点として、多くの脂肪細胞を注入しても、一定以上は組織に残らないという点がありました。
これは、脂肪が定着するために、その脂肪に栄養を届けるための血管が必要だったためです。
そこで、他の種類の細胞に変化する能力を持つ幹細胞を混ぜて注入することで、幹細胞が血管の細胞に変化して、栄養をより届けることができるようになり、結果定着しやすくなりました。
点滴、注射の違い
幹細胞治療は、点滴で行う場合と注射で行う場合があります。
点滴で治療を行うメリットは、全身での若返り効果が期待できる点です。
血液は約50秒ほどで全身を巡るといわれます。点滴で幹細胞を投与すると、血液の流れによって全身に行き届きます。
そして幹細胞には、ダメージがある部分に集まろうとする「ホーミング効果」という性質があり、その性質によりダメージを受けている組織に幹細胞が集まり、回復させてくれます。
また、注射によって直接投与できない部分の治療にも有効な手法です。
一方で注射で治療を行うメリットは、ダイレクトに組織に幹細胞を投与することができるため、局所的な効果を得やすいという特徴があります。
例えば、顔のシワ・たるみの気になるところに直接投与するなどです。
個人の悩みに合わせた治療が可能ですので、医者とよく相談して決めるとよいでしょう。
幹細胞療法での具体的な若返り効果
次に幹細胞治療での具体的な若返り効果についてみていきます。
顔の見た目の老化改善
気になるたるみ、ほうれい線などに幹細胞を注入することで、元気な線維芽細胞の数を増やし、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の生成を促進して症状を改善できます。
肌のターンオーバーや新陳代謝も促進され、シミ・くすみ・しわなどにも効果があります
また、点滴投与することによって、投与した細胞は体全体に行き届くため、顔だけではなく全身でのトータルケアが可能です。
抜け毛、薄毛などの改善
毛包幹細胞が細胞分裂することによって髪の毛が生えてくるのですが、抜け毛や薄毛に悩んでいる方は、この毛包幹細胞が休止期の状態で止まってしまい、うまく働いていないことが考えられます。
脂肪由来の幹細胞は、毛包幹細胞を刺激し、成長期への促すことで毛髪サイクルを正常に戻す役割があります。
そのため、幹細胞を注入することにより、抜け毛、薄毛などの改善が期待できます。
臓器の若返り
幹細胞には分化能力があるため、様々な臓器の細胞に変化できます。
そのため幹細胞は、病気や弱った臓器の細胞を補充して、根本的に修復が可能です。
しかし、加齢などにより幹細胞の数や修復機能が低下していくと、臓器も老化が進行していきます。
そこで幹細胞治療によって、元気な幹細胞を増やすことによって、臓器の若返りの効果が期待でるでしょう。
副作用やデメリット
副作用やデメリットなども気になる方も多いかと思います。
1つずつ説明していきます。
痛みや腫れ
幹細胞治療で使用される幹細胞は、治療者自身の細胞のため副作用はほとんどありません。
それでも副作用で1番多いとされるのが痛みや腫れです。
点滴、注射した箇所に痛みや腫れが出現することもあれば、培養した幹細胞を自分の体に戻した際、関節に急激に幹細胞が入ってしまうことによって、痛みや腫れが現れる可能性があります。
ですが、通常これらの痛みや腫れは数日で治るため心配はいりません。
もし万が一、痛みや腫れが治らなかったら、主治医に相談するのがよいでしょう。
治療が受けられない場合がある
以下の方は基本的に幹細胞治療が受けられません。
- 癌の治療中の方
- 妊娠又は妊娠の可能性がある方
- 感染症が発見された場合や、血液凝固能に異常がある方
- 今まで幹細胞治療を行っていてアレルギーが出た方 など
幹細胞治療に興味がある方や検討している方で、心当たりある方は、まずはじめに相談しましょう。
また、幹細胞治療は、「特定認定再生医療等委員会」の厳しい審査に通った、設備や体制が整った施設でないと受けられません。
そのため、幹細胞治療を行えるクリニックは多くないので、お住まい場所によっては、遠くまで足を運ばないと治療を受けられないこともあります。
治療後の献血はできない
幹細胞治療は、ヒト由来製品を扱った最先端の治療技術のため、現在の技術では、発見できない未知のウィルス感染を起こしている可能性が絶対ないと言い切れません。
そのため、一度でも幹細胞治療を受けた方は、以後献血ができなくなります。
このため、献血を定期的にしていた方や今後もしていきたい方などには注意が必要です。
費用相場
美容で幹細胞治療を受ける場合、保険適用はされず、費用は全額自己負担です。
費用相場は、安くて150万~300万円、高ければ数千万円もかかることもあるでしょう。
幹細胞治療は、治療者の体の組織から採取した幹細胞を培養して増殖させ、それを体内に投与します。
特に専用の施設、機器での細胞培養や管理が必要になってくるのでその分、高額になるのです。
幹細胞を使用する他の治療法
幹細胞を使った治療には他に、幹細胞培養上清液点滴と幹細胞コスメがあります。
幹細胞培養上澄液点滴
幹細胞培養上清液点滴とは、体内の間葉系幹細胞と呼ばれる幹細胞を培養した際の上澄み液を点滴し治療する方法です。
幹細胞を培養・増殖させると、サイトカインと呼ばれる体に有益なタンパク質を放出するため、培養液には様々なサイトカインが含まれます。
この培養液から、幹細胞や不要な物質を処理し、治療に使えるようにした液が幹細胞培養上清液になります。
幹細胞培養上清液に幹細胞は入っていませんが、その代わりにサイトカインが豊富に含まれており、それが体に作用して効果を発揮します。
幹細胞培養上清液点滴も、肌改善などのアンチエイジングが可能です。
費用相場は1回の点滴で2~3万円で、複数回点滴するコースで10万〜90万円ぐらいなので、幹細胞治療と比較するとかなり受けやすい値段になります。
幹細胞コスメ
幹細胞コスメは大きく2種類あります。
- ヒト幹細胞コスメ
- 植物幹細胞コスメ
ヒト幹細胞コスメは、ヒトから採取した幹細胞を培養して得られる幹細胞培養上清液を配合したコスメです。
細胞成長因子を多く含み、肌のターンオーバーや新陳代謝を促進させます。
ターンオーバーが繰り返し行われることで、肌質やシミ・くすみ・しわなどの改善が期待でき、若返り効果に有効であると注目されている化粧品です。
一方で植物幹細胞コスメは、植物由来の植物幹細胞培養液を配合したコスメです。
植物幹細胞は、高い抗酸化作用と保湿作用を持つといわれているため、植物幹細胞培養液を配合した化粧品にも、抗酸化作用や保湿作用などが期待できます。
植物幹細胞コスメは、ヒト幹細胞コスメと比べて安価で手に入りやすいという特徴があります。
しかし、肌のターンオーバーや新陳代謝を促進させる効果はないので、若返り効果をより求めるならヒト幹細胞コスメの方がおすすめです。
まとめ
今回の記事では、幹細胞治療について若返り効果の仕組みや具体的な効果、副作用や費用相場などを解説しました。
幹細胞治療は、自身から採取した幹細胞を増やして体に投入するという新しく画期的な治療方法です。
国の審査を通ったクリニックのみ治療可能なため、安全性の確認がしやすいともいえます。
費用はかかりますが、その分若返り効果は高く望めるので、幹細胞治療に興味がある方や検討している方は、ぜひ対応しているクリニックに相談してみてください。
そして理想の自分に近づいていきましょう!