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神経幹細胞とは?若返り効果がある?働きや効果、その特徴や再生医療での成果をわかりやすく徹底解説!

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院長 黒木 良和

九州大学医学部卒
九州大学大学院修了 医学博士
川崎医療福祉大学客員教授
元神奈川県立こども医療センター所長
元聖マリアンナ医科大学客員教授

神経幹細胞による再生医療は、神経細胞が影響で発症する脊髄損傷やアルツハイマーなどの治療に対して、効果的であるとして注目を集めています。

これまでダメージを受けてしまった神経は再生することがないとされていましたが、神経幹細胞を活用した医療技術の発展によって、覆される可能性が高いです。

今回は、神経幹細胞の働きや効果、特徴や再生医療での成果などについて、わかりやすく徹底解説します。

神経細胞とは?

神経幹細胞

神経細胞とは、神経系を構成する細胞で情報の伝達や処理を担う細胞で、ニューロンと呼ばれることもあります。

神経細胞は、無数の神経細胞同士が枝分かれした突起「シナプス」を介して結合しネットワークを形成することによって、知覚や運動、記憶や学習などの脳機能を支えています。

また、1個の神経細胞はシナプスから約1万個以上の神経細胞の電気信号を受け取ることができると考えられています。

電気信号は、神経伝達物質によって神経細胞から神経細胞へと伝達されます。

神経幹細胞とは? 

神経幹細胞

神経幹細胞とは、自己複製し脳や脊髄を構成している神経細胞や神経細胞以外のグリア細胞と呼ばれる細胞に分化する能力を持っている細胞です。

脳内に神経幹細胞が存在していることによって、必要に応じて神経細胞やグリア細胞を共有して数を補うことができます。

そのため、神経幹細胞の分化活動が低下してしまうと、うつ病や脳機能の低下などのさまざまな症状が発症しやすくなることがあります。

幹細胞とは?

幹細胞とは、失われてしまった細胞を再び生み出して補給する働きを持っている細胞で、皮膚や血液、筋肉や臓器などの組織に分化する能力と自己複製する能力の2つを持っています。

体を構成する細胞ひとつひとつの寿命は、数日から数ヶ月ほどと短いものがほとんどなので、細胞は常に入れ替わり続けています。

そのため、幹細胞は細胞が入れ替わる時に大きく活躍します。

また、幹細胞には、主に上記で解説した「神経幹細胞」と、血液や皮膚、筋肉や臓器などの組織に分化する「組織幹細胞」の2つがあります。

iPS細胞とは?

iPS細胞とは、2006年に京都大学で山中伸弥教授の研究グループが人工的に作った「人工多能性幹細胞」という細胞です。

体細胞に、4種類の遺伝子を導入して培養することによって、体のさまざまな組織に分化する能力と自己複製する機能を持った多能性細胞になります。

また、実験では、iPS細胞から血小板を作ることに成功しており、今後赤血球や白血球などの血液成分を作ることも可能になりつつあります。

そのため、将来的にiPS細胞は、さまざまな病気や怪我の治療で活用されることが予想されています。

神経幹細胞の歴史

神経幹細胞

これまで傷ついた神経は治ることがないとされていましたが、神経幹細胞の働きによって直せる可能性が出てきました。

ここでは、再生医療で高い効果が期待されている神経幹細胞の歴史について解説します。

1990年代に発見された

1928年にスペインの研究者が成体哺乳類の神経系は1度ダメージを受けると2度と再生しないことを報告しました。

しかし、1960年代にラットを使った実験によって、成体でも神経細胞が再生することが確認されました。

さらに1990年代には、成体マウスの脳から神経細胞とグリア細胞を分裂と増殖をしながら生み出す、神経幹細胞が発見されました。

神経細胞に関する研究は、1928年の最初の報告から約60年以上も経て、報告が覆されました。

神経幹細胞の歴史まとめ

神経幹細胞が発見されるまでの間、神経の再生・新生についての研究で決定的な証拠がなく、「神経は再生・新生ができる可能性がある」という状態でした。

また、多くの間で神経は再生しないということが常識になっていましたが、度重なる研究によって、「神経の再生・新生は可能である」という状態に変わりました。

そのため、今後も神経幹細胞や神経系に関する常識や期待は変化し続けていくでしょう。

神経幹細胞の特徴と働き

神経幹細胞

神経幹細胞には、分化して自己複製する能力があり、神経細胞やグリア細胞を補給するなどの大切な働きを持っています。

続いては、神経幹細胞の具体的な特徴や働きを主に4つに分けて解説します。

脳の中にある幹細胞

神経幹細胞

神経幹細胞は、脳内組織の海馬と脳室下帯に存在しています。

脳神経の細胞周期に合わせて、脳の内側の脳室から外側の脳膜まで細胞核を移動させて、細胞核が脳室に存在している時に限り、細胞分裂を行い増殖します。

また、神経細胞やグリア細胞を必要に応じて供給しており、記憶障害や認知機能低下などを防ぐ働きを持っています。

実際に、海馬の神経幹細胞を除去すると、記憶障害を発症することが報告されています。

神経細胞以外の神経系細胞にも分化する

神経幹細胞

神経幹細胞は、神経細胞以外の神経系細胞にも分化する能力を持っています。

脳内のネットワークは無数の神経細胞が結合して構成されており、神経組織を構成している細胞の約90%は神経細胞以外のグリア細胞です。

また、グリア細胞は血管系と神経細胞を結びつけて栄養物質を供給する「アストロサイト」と、神経細胞同士の電気信号速度を高める働きを持つ「オリゴデンドロサイト」の2種類があります。

神経幹細胞は、以上2種類のグリア細胞にも分化できるので、脳内の機能を一定に保つことができています。

胎児期の脳を短期間で形成する

神経幹細胞

脳を構成している神経細胞は胎児期の間に大量に形成され、短期間で脳を完成させます。

胎児期の脳内では神経幹細胞が大量の神経細胞を形成するために、盛んに細胞分裂を行います。

また、脳を形成する初期段階では、神経幹細胞は自己複製を繰り返し行い、神経幹細胞自体の数を増殖させます。

そして、一定数まで神経幹細胞が増殖したら、神経細胞やその他の神経系細胞を生み出します。

そのため、胎児期の脳内では、神経幹細胞がとても盛んに分裂を行っています。

生涯にわたり脳機能を維持する

神経幹細胞

成体期の脳内にも神経幹細胞は存在していますが、胎児期のように盛んに増殖することはありません。

しかし、生涯にわたり脳機能を維持するために、毎日神経細胞やグリア細胞を供給し続けています。

また、成体期の神経細胞やグリア細胞の供給は、加齢やストレスなどが原因で減少したり、刺激があり充実した環境にいると増加することが分かっています。

そのため、成体期では神経細胞やグリア細胞の供給量が低下している方が多いです。

加齢と共に減少する

神経幹細胞

神経幹細胞は、加齢と共に増殖する能力や神経細胞やグリア細胞を生み出す能力が低下していきます。

また、神経幹細胞自体の数も減少してしまうこともあるので、加齢と共に記憶や学習、運動などの脳機能が低下していき、認知症やアルツハイマーなどを発症する方が多くなります。

そのため、上記でも解説したように、神経細胞の分裂を盛んにさせるためにも、ストレスが少ない充実した日々を送ることが大切です。

加齢と共に減少していきますが、減少ペースを遅くすることはできます。

神経幹細胞による再生医療の成果

神経幹細胞

神経幹細胞の働きを利用した再生医療が実用化されることによって、これまで治らなかった病気や怪我を治せるようになります。

ここでは、神経幹細胞による再生医療によって得た成果を、主に3つ解説します。

自己複製能力と他分化能力がある

神経幹細胞は、その他の幹細胞と同様に自己複製能力と他分化能力の2つを持っています。

そのため、実際に脳虚血や脊髄損傷、パーキンソン病などの神経疾患の治療で神経幹細胞を移植する再生医療を行い、効果があることがわかっています。

現在では、iPS細胞から神経幹細胞を培養する技術も開発されているので、今後、神経疾患の治療で大きく活躍することが期待されています。

認知機能を回復させた

京都大学ウイルス・再生医科学研究所のグループは、神経幹細胞の分裂が盛んに行われている胎児期の遺伝子を、高齢で認知機能が低下したマウスに導入することで、マウスの認知機能を回復させることに成功しました。

そのため、脳機能が低下している老齢期の脳を神経幹細胞を活用することで、若返らせることができる可能性があるので、認知症の新たな治療法開発に大きく貢献しました。

脊髄損傷マウスの運動機能が改善した

脊髄損傷によって歩行困難のマウスを対象に、ES細胞(胚性幹細胞)という人工多能性細胞から神経幹細胞を培養してマウスに移植することで、歩行可能な段階にまで運動機能を回復させることに成功しました。

脊髄損傷をした場合、2度と運動機能が改善されることがありませんでしたが、神経幹細胞による再生医療によって、今後歩行できるまで回復させられる可能性が高くなりました。

再生医療の今後の課題について

神経幹細胞

神経幹細胞による再生医療や神経系細胞の再生医療は、現在世界中で注目されており、今後も盛んに研究・開発が進んでいくことが予想されています。

また、実際に脳虚血や脊髄損傷、パーキンソン病の治療で効果があることが報告されているので、将来的に神経系疾患も完治する病気の1つになる可能性が高いです。

まとめ

神経幹細胞

幹細胞による再生医療の発展は、今後も加速していき神経幹細胞による再生医療も実用化される日が訪れる可能性がとても高いです。

また、マウスや神経疾患の方を対象に行った神経幹細胞の移植では、高い成果を得ることができています。

そのため、これまで治らないとされてきた病気や怪我を完治させられるようにもなるでしょう。

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